日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、臼井 洋一(金沢大学)、座長:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)、北原 優(九州大学 大学院 比較社会文化研究院)


09:30 〜 09:45

[SEM15-03] 弥生時代の古地磁気強度変化について

*畠山 唯達1、横田 大峻2北原 優1、中村 直子3 (1.岡山理科大学フロンティア理工学研究所、2.岡山理科大学生物地球学部、3.鹿児島大学埋蔵文化財調査センター)

キーワード:地磁気永年変化、絶対地球磁場強度、弥生時代、弥生土器

数千年程度の過去の地球磁場強度およびその変化を調査するための手段として、土器などの熱を受けた考古試料に対する古地磁気強度測定が有効である。考古試料、とくに土器は各地域で形式変化を用いた編年が多くされていて時間分解能が高いことが期待される。日本における過去2000年前より以前の先行研究データは、ほとんど旧来の手法によって得られたものによって占められおり、現在の手法や試料判定基準に適合しない可能性が高い。一方、紀元後の試料については、最近、新しい測定手法や詳細で慎重な試料選定を行ったいくつかの研究事例が報告されている(Kitahara et al., 2018; 2021; Tema et al., 2022; Hong et al., 2013; など)。本研究では主に弥生土器の試料を用いて強度実験を行い、日本の強度データセットの拡充を目指すとともに、同年代範囲における強度変動について考察する。
 本研究で使用した試料は、鹿児島大学構内遺跡(釘田第8地区)より出土したもので(鹿児島大学埋蔵文化財調査センター, 2019)、主な器種は甕である。試料の年代は、土器の形式を基準に、同形式の土器の他遺跡・他地域での共伴出土関係、放射性炭素年代等(中園, 2004; 川口ほか, 2020)を組合せ、弥生時代前期から中期と推定されている。すべての試料について事前に段階熱消磁を施した古地磁気方位の変化を調べ、2次被熱の評価をしたうえで、綱川-ショー法(Yamamoto et al., 2003)を使用して古地磁気強度の測定を行った。
段階熱消磁測定の結果、半分以上の試料から400~460℃付近で屈曲・湾曲をした消磁曲線が得られた。これらの土器片は土器使用時の二次被熱の影響を受けていると考えられ、綱川-ショー法には向かないものと判断した。
 直線的な熱消磁曲線を示した試料に対して、古地磁気強度測定を行ったところ、4つの試料(試料番号C2(500±50 BCE)・C3(650±50 BCE)・C8(175±225 BCE)・B30(75±175 BCE))からN≧3かつσ/F≦20%の合格データを得ることができた。古い時代の2つの試料が示す平均強度は標準偏差の範囲で一致(C3: 53.0±2.7μT, C2: 53.5±1.9μT)し、時代が下るごとに弱い地磁気強度(C8: 39.9±2.5μT, B30: 19.8±0.8μT)を示した。ここから弥生時代前期から中期にかけて日本における地磁気強度は緩やか→急に減少したことが推定される。この傾向はGEOMAGIA50(Brown et al., 2015)データベースにある全地球的な傾向と一致していることから、この現象は軸対称双極子磁場(g10)の減少によるものと推定される。その後、極東地域では、2世紀にかけて急激な上昇(Tema, 2022; 吉村ほかJpGU2022)をしたと考えられる。