日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (14) (オンラインポスター)

コンビーナ:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、臼井 洋一(金沢大学)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SEM15-P14] 高知県高知市高須付近の国分川で採取した堆積物からの微生物細胞の分離と磁性細菌の観察

*スカルジッチ 瑠史雄1山本 裕二1諸野 祐樹2政岡 浩平3富岡 尚敬2、寺田 武志4 (1.高知大学、2.海洋研究開発機構高知コア研究所、3.九州大学、4.(株)マリン・ワーク・ジャパン)

キーワード:古地磁気、磁性細菌

堆積物には磁性粒子が含有され,堆積時の地球磁場の方位と強度に応じて配向することで自然残留磁化(NRM)を獲得し,過去の地球磁場の変動をほぼ連続的に記録している.堆積物を構成する磁性粒子には,体内に磁鉄鉱などの磁性鉱物を形成する磁性細菌に起源をもつものもある.たとえば,NRMの20­–30 %が磁性細菌起源の磁鉄鉱に担われると推定される海底堆積物もあり,その量的な重要性が指摘されている(e.g. Yamazaki, 2012; Yamazaki and Ikehara.,2012).一方,現世の堆積物について,多様な環境に生息する磁性細菌の探索や,それらの形態学的・系統学的研究などが精力的に進められているが,これらの堆積物が獲得したNRMについて,磁性細菌由来の残留磁化がどの程度の割合で寄与しているのか,定量的な評価は行われてきていない.
 本研究では,現世の堆積物が獲得するNRMについて,磁性細菌起源の磁性粒子が寄与する割合を定量的に評価する手法について検討するため,高知県高知市高須付近の国分川の川底から堆積物コアを採取した.その際,砂質堆積物を避けるため,マイナス潮位となる日時を選定し,泥状堆積物が露出している川底から,直径約5 cm のプッシュコアを⽤いて採取した.
 堆積物コアは,速やかに1.5%NaClと10%ホルマリンの混合溶液を浸透させ,堆積物中の微生物細胞の「固定処理」を行った.その後,コアを深度方向に5 cm 間隔で分割し,それぞれの上面から3本の25ccシリンジを挿入し,50 mlチューブに分取した.その後,速やかに,10%中性緩衝ホルマリンを加えて40 ml 程度にメスアップし,「固定処理」した.深度15–20 cmにあたる2試料から密度勾配遠心分離法(密度分離)で細胞を回収し,それぞれを5 mlに濃縮した.磁性細菌の濃度を高めるため,磁性分離カラムを用いて磁気分離を行った.磁気分離した溶液2 μl を Cu円状のグリッドに滴下して自然乾燥し,透過化型電子顕微鏡(TEM)観察用試料を作製した.
 透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果,長さ1–3 µm×幅0.5–1 µmの細胞が多数観察できた.そのうち細胞内に長さ100–150 nm×幅20–30 nmの涙滴状の磁性粒子を3–12個形成した14個体,粒径50–80 nm の立方体状の磁性粒子を6個形成した1個体,計2種類15体の磁性細菌を確認できた.確認できた磁性細菌のほとんどが涙滴状の磁性粒子だった為,この種が優占種という可能性がある.涙滴状の磁性粒子について,元素分析と電子回析像解析を行った結果,マグネタイトだということがわかった.