日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC38] 固体地球化学・惑星化学

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (15) (オンラインポスター)

コンビーナ:下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、石川 晃(東京工業大学理学院地球惑星科学系)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SGC38-P03] 堆積軟岩の正規圧密プロセスにおける熱物性の変化特性

*山田 共喜1林 為人1石塚 師也1神谷 奈々2、宮崎 裕博1、友松 広大1 (1.京都大学大学院工学研究科、2.同志社大学理工学部)

キーワード:堆積軟岩、熱物性、圧密

沈み込み帯における地震断層の力学特性は温度に強く影響されるため,沈み込み帯を構成する堆積層の熱構造の解明が重要である.そのためには,堆積物の熱物性を把握することが重要であり,特に堆積および埋没進行過程での熱物性の変化を知る必要がある.軟質な海洋堆積物に対する,静水圧条件下での圧密と熱物性の関係に関しては議論が行われているが,圧密時の応力状態(K0状態)での圧密プロセスにおける熱物性の変化は実験的に確かめられていない.そこで本研究では,堆積軟岩が正規圧密領域下においてどのような熱物性変化を示すかを確かめることを目的とした.圧密リングを用いてK0状態を模擬した圧密試験及び試験前後での物性の測定を行い,圧密による間隙率変化に伴う熱物性の変化を調べた.さらに,測定で得られた間隙率-熱物性の関係を圧密試験中の間隙率のデータに適用することで,正規圧密領域下における熱物性の連続的な変化を推定した.
試料には,千葉県房総半島東部に分布する上総層群梅ヶ瀬層の堆積軟岩を用いた.露頭から切り出してきたブロックサンプルを堆積層理面に対して平行方向にコアリングし,高さ 20 mm,直径 25 mm の円柱形に成形した.供試体は同一のコアから同じ方向で 5 個作製した.実験では供試体を水飽和させたものを使用した.圧密試験は供試体の側方を圧密リングで拘束し,一軸定ひずみ速度載荷により排水条件で行った.また可能な限り幅広い間隙率変化を調べるため,圧密試験は5個の供試体でそれぞれ異なる載荷圧力を加えた.さらに,1回の実験が終了した後に可能であればその供試体を再度試験に使用した(その際載荷圧力が前回より大きくなるように変更した).また,試験の前後には重量,間隙率,熱伝導率,熱拡散率,比熱,参考用に比抵抗とP波速度を測定した.
いずれの供試体も最大20~80MPaまでの圧密を行い,明瞭な降伏が認められ,いわゆる正規圧密領域に至った.圧密試験の前後に測定した間隙率と熱伝導率,熱拡散率及び体積比熱に強い相関がみられた.圧密により間隙率が減少すると,熱伝導率と熱拡散率は増加し,体積比熱は減少する傾向がみられた.これらにより,熱物性と間隙率の経験式を得ることができた.また,正規圧密状態がよく現れている圧密試験データを5つ選び出し,上記の経験式を用いて推定熱物性を算出した結果,正規圧密中の堆積軟岩の熱伝導率と熱拡散率は圧力の増加に伴って対数関数的に増加し,比熱は対数関数的に減少する特性が推定された.これらの傾向がみられる理由として,圧密により軟岩の間隙率が低下して間隙水が排出されることによって,全体としての熱物性がより岩石粒子部分のものに近づいていくということが考えられる.また,本研究で用いた試料の採取地点の上位層および下位層の堆積軟岩における間隙率と熱伝導率データとの比較を行ったところ,トレンドが本研究の圧密試験による変化と一致しており,天然の圧密状態を模擬できていることが示唆された.