日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL23] 日本列島および東アジアの地質と構造発達史

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、細井 淳(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)、羽地 俊樹(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門)、座長:羽地 俊樹(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

16:15 〜 16:30

[SGL23-04] 新生代における棚倉破砕帯の運動と変形礫岩の関係

*細井 淳1檀原 徹2岩野 英樹2 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門、2.株式会社京都フィッション・トラック)

キーワード:右横ずれ運動、棚倉堆積盆、中新世、U-Pb年代、FT年代

福島県南部~茨城県北部には新生代の棚倉堆積盆が発達する.棚倉堆積盆は日本海拡大の時期に棚倉断層帯の運動によって,17–15 Ma頃に短期間の間に,急速な堆積盆の発達と沈降・海進,堆積盆の埋積,隆起が生じた(Hosoi et al., 2020).しかし,堆積盆の発達を左右した棚倉断層帯の運動については諸説あり決着がついていない.
大槻(1975)は棚倉破砕帯西縁断層沿いの新第三系に認められる変形礫を用いて,棚倉西縁断層の運動を検討したが,変形礫は風化した礫が圧密したものとする考えもある(田切ほか,1999).本研究では棚倉破砕帯西縁断層周辺の地質調査,特に断層露頭,変形礫の観察及びジルコンU-Pb, FT年代測定を用いて,棚倉破砕帯西縁断層の運動と変形礫の関係を検討した.
結果,新第三系堆積以降(約15 Ma以降)に棚倉断層帯は右横ずれ運動を起こし,変形礫はその運動に伴って形成されたことが明らかになった.断層露頭に発達する複合面構造から棚倉破砕帯西縁断層の右横ずれの運動が考えられた.また,変形礫の実体は固結度が弱くなった花崗岩質礫とアルコースであることが判明したが,棚倉破砕帯西縁断層の右横ずれ運動に伴ったリーデルせん断面のP面に沿って,変形礫は見かけ上,伸長した形状になっていることが考えられた.さらに礫岩には調査地から南東方向に約20 km離れた日立変成岩起源と考えられるものが含まれており,棚倉断層帯の特に棚倉破砕帯東縁断層が右横ずれ運動をすることによって,日立変成岩起源の礫が調査地まで運ばれた可能性が考えられた.この棚倉断層帯の運動は礫岩形成後になるため,新第三系最上部の15 Ma以降である.