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[SSS09-P19] ブータンにおける表層地盤増幅率地図の作成
キーワード:ブータン、Vs30、地盤増幅、微動
ブータンはヒマラヤ山脈の東側・ユーラシアプレートとインドプレートの衝突帯に位置しており,世界有数の地震帯に含まれる.同国では20世紀以降にM7を超える地震の報告例が無いが,2009年9月にはブータン東部でMw6.1の直下型地震が発生し,死者を伴う災害が発生した.また,2011年9月にはインドのSikkim地震(Mw6.9)に伴い,西部のハ県およびパロ県を中心に被害が生じている.同国における将来的な地震発生のリスクを踏まえ,近年では詳細な活断層調査(例えば中田他,2022日本活断層学会)や確率論的地震ハザード評価(Pagani et al., 2018; Stevens et al., 2020),シナリオ型地震動評価(はお他,2022JpGU)が進められている.Nepal (2021)およびHayashida et al. (2022SSJ)は,2020年以降にThimphu,Essuna,Uraの3地域で実施した微動アレイ探査処理結果を取りまとめ,全探査地点における浅部S波速度構造ならびに地表から深さ30mまでの平均S波速度(Vs30)を推定した.得られたVs30は,米国地質調査所(USGS)が同地域を対象に推定した値(Heath et al., 2020)より全体的に低く求まっており,地震発生時に地震動が従来の想定を上回る可能性を示唆している.このような乖離を生じる理由は,従来のVs30が30秒(約900m)メッシュの標高データに基づいて推定されており,ローカルな地形の変化が考慮されていないことに因るものである.そこで,本研究では米国航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル立体データ(SRTM;1秒メッシュ)を入手し,Allen and Wald (2009)の手順に基づいて標高データに基づく3地域を対象とした高解像度のVs30の分布を求めた.標高データから推定されたVs30の分布は地形の特徴が色濃く反映されたものとなっているが,微動アレイ探査によって求めたVs30との相関は低い.次に,標高および微動アレイ探査から推定したVs30を統合し,既存の経験式(Abrahamson et al., 2014; Stewart et al., 2017など)に基づく表層地盤増幅率を推定した.増幅率は市街地において1–2倍の範囲となり,従来のVs30に基づく評価を上回るものとなった.市街地の増幅率には微動探査の結果が大きく寄与しており,今後の継続的な微動探査の必要性を示唆している.本発表では,更新した地盤増幅情報を基に実施したシナリオ地震動の再評価および確率論的地震動予測地図の更新状況についても併せて報告する.
謝辞:
本研究は,科学技術振興機構(JST)および国際協力機構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「ブータンにおける組積造建築の地震リスク評価と減災技術の開発(代表者:青木孝義,平成28年度〜令和4年度)」の一環として実施したものである.
謝辞:
本研究は,科学技術振興機構(JST)および国際協力機構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「ブータンにおける組積造建築の地震リスク評価と減災技術の開発(代表者:青木孝義,平成28年度〜令和4年度)」の一環として実施したものである.