日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (17) (オンラインポスター)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[STT39-P07] 衛星合成開口レーダー干渉法を用いた2021年アラスカ地震における地殻変動推定

*内藤 瑛乃1馬場 俊孝2 (1.徳島大学大学院創成科学研究科理工学専攻、2.徳島大学大学院)


キーワード:衛星合成開口レーダー干渉法、アラスカ

アメリカアラスカ沖は,北米プレートと太平洋プレートの境界に位置し,地震が多く発生している.2021年には深さ35kmのMw8.2の地震が発生した.大地震の発生は少ないため,この地震のメカニズムを解明することは,アラスカ地域のみならず世界中の海溝型地震による被害が予測される地域においても有用である.この地震による地殻変動は陸上のGNSS観測網で記録されたが,衛星合成開口レーダによる面的な地殻変動の推定はまだ行われていない.面的な地殻変動の推定によって派生断層の運動などよる微小な変動を発見できる可能性がある.本研究では,2021年アラスカ地震を対象として,衛星合成開口レーダ干渉法(Interferometric Synthetic Aperture Radar: InSAR)による空間的連続性および空間分解能のよい地殻変動分布を求めた.
初期解析結果として,震源付近では衛星視線方向において約0cmの変動となったが,InSAR解析結果に含まれる大気による影響を推定・除去を行っていなかったため,大気遅延補正を行った.その結果として,震源付近では衛星視線方向において約30cmの衛星から遠ざかる変動となった.
Nevada Geodetic Laboratoryが提供しているGNSS観測データを用いて衛星視線方向の変位量を求め,大気遅延補正後の解析結果と比較したところ,大きな違いが見られた.この理由として,合成開口レーダーの電波が通過する電離層の擾乱といった様々な誤差に起因する長波長の誤差が含まれていることが考えられる.そこで,GNSS観測による地殻変動量が正しいものと仮定し,GNSS観測データによる補正を行った.
本研究で使用した各GNSS局におけるInSAR解析結果の変動量がGNSS観測データによる変動量と一致するようにInSARから求めた地殻変動分布を平行移動させた.その結果,地殻変動の差は各局でばらつきがあるため,GNSS局1点のみでの補正は正確な誤差の推定・除去を行うことができなかった.各局でばらつきが見られる地殻変動の差は,空間的に長波長の誤差であることが考えられるため,GNSS局3点におけるInSAR解析結果の変動量との差から一次傾向面を求め,その値をInSAR解析結果から得た地殻変動分布から除いた.その結果として,震源付近では衛星視線方向において約20cmの衛星から遠ざかる変動となった.これは,震源付近の地形が,地震が発生したことで,南東方向に変位したためであると考えられる.微小な変動を発見することができなかったが,原因として解析範囲の広さが挙げられる.今後は解析範囲の縮小による微小な変動の発見を行う.