15:30 〜 17:00
[STT41-P02] 3成分光加速度計と光ファイバ分布型音響センサ(DAS)による深層地震観測システム
キーワード:光加速度計、DAS、深層地震観測、微小地震
3成分光加速度計とDASの光ハイブリッドシステム
高温・高圧下でも動作する3成分光加速度計と光ファイバ分布型音響センサ(DAS)を組み合わせた新しい観測システムを開発し、新潟工科大学構内にある3000m級観測井の深さ2000mに設置した。この光ハイブリッドシステムは電子部品を用いず光回路だけで構成されており、高温・高圧などの極限環境で動作する。
光加速度計の仕組み
採用している光加速度計は、光ファイバにレーザ光を入射し、その先に取り付けたバネ-質量-ダンパー系の振動子の変位を干渉法によって観測する方式を用いている。振り子は地動入力を受けて強制振動をするため、振り子の固有振動数よりも低周波数領域で検出される振幅は、周波数によらず地動の加速度に比例することから加速度計となる(ref.1)。
新潟工科大での観測の経緯
光加速度計とDASを組み合わせたシステムを、新潟工科大の大深度観測井に設置して観測をおこなっている。この観測井は、深部地盤の地震波伝達特性の把握を目的にJNES(原子力安全基盤機構)が2011年7月に設置し、その後2019年3月に新潟工科大学に返還されたものである。深さ2000mで約105℃、3000mで約140℃であり(ref.2)、深層部で観測するために100℃以上でも観測が可能な光加速度計を開発した。
設置
このシステムはセンサ部に電気が必要なく、通信線が光ファーバのみであることから、深井戸に埋設するケーブルは直径6mm程度と、従来同程度の深さに埋設する場合とは格段に細くすることができ、設置に必要な機材や人員を少なくさせることができるため設置作業が非常に簡便となる。
深層地震観測
深さ2000m、温度105℃の環境下において、光加速度計は2022年2月21日から継続して1kHzサンプリング連続データを取得している。観測開始から7月6日までの130日間で301個の地震を検知し、単点の地震計記録から粒子軌跡解析法によって震源を推定した(Fig.1)。深井戸の半径5kmの周辺ではマグニチュード-1程度の微小地震を検出している。また、予備のファイバを用い7月27日から8月4日までDASの連続観測を実施し、複数の自然地震を捉えることができた(Fig.2)。
3成分光加速度計のノイズレベルと周波数特性
3成分光加速度計の特性を示すため、ノイズスペクトルをFig.3に示す。比較のために観測点付近にあるF-net柏崎のノイズスペクトルも表示している。3成分光加速度計は、周波数が0.3Hzより高いところでは、HNMよりもレベルが低く、脈動をとらえることができているが、0.3Hzよりも低いところでは、F-netの記録に比べてノイズレベルが高いことがわかる。このやや長周期の部分の性能を改善することは喫緊の課題である。
結論
3成分光加速度計とDASの光ハイブリッドシステムは、100℃を超える高温環境でも1年にわたって安定動作し、光加速度計による微小地震の検出とDASによる地盤内伝達特性の解析ができることがわかった。さらに観測を継続し、光加速度計とDASを融合させた新たな解析手法の確立や長周期側の性能の改善に向けての開発を急ぎたい。
謝辞
新潟工科大学には、観測井および観測小屋を使用させていただくなど、多大な協力をいただきました。ここに記して感謝いたします。
参考文献
1. Yoshida et. al, Real-time displacement measurement system using phase-shifted optical pulse interferometry: Application to a seismic observation system, Jpn. J. Appl. Phys., vol.55 (2016) 022701.
2. 次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト 次世代火山推進事業 課題B2-2 成果報告書
https://www.kazan-pj.jp/reporting/research2021/b2-2
高温・高圧下でも動作する3成分光加速度計と光ファイバ分布型音響センサ(DAS)を組み合わせた新しい観測システムを開発し、新潟工科大学構内にある3000m級観測井の深さ2000mに設置した。この光ハイブリッドシステムは電子部品を用いず光回路だけで構成されており、高温・高圧などの極限環境で動作する。
光加速度計の仕組み
採用している光加速度計は、光ファイバにレーザ光を入射し、その先に取り付けたバネ-質量-ダンパー系の振動子の変位を干渉法によって観測する方式を用いている。振り子は地動入力を受けて強制振動をするため、振り子の固有振動数よりも低周波数領域で検出される振幅は、周波数によらず地動の加速度に比例することから加速度計となる(ref.1)。
新潟工科大での観測の経緯
光加速度計とDASを組み合わせたシステムを、新潟工科大の大深度観測井に設置して観測をおこなっている。この観測井は、深部地盤の地震波伝達特性の把握を目的にJNES(原子力安全基盤機構)が2011年7月に設置し、その後2019年3月に新潟工科大学に返還されたものである。深さ2000mで約105℃、3000mで約140℃であり(ref.2)、深層部で観測するために100℃以上でも観測が可能な光加速度計を開発した。
設置
このシステムはセンサ部に電気が必要なく、通信線が光ファーバのみであることから、深井戸に埋設するケーブルは直径6mm程度と、従来同程度の深さに埋設する場合とは格段に細くすることができ、設置に必要な機材や人員を少なくさせることができるため設置作業が非常に簡便となる。
深層地震観測
深さ2000m、温度105℃の環境下において、光加速度計は2022年2月21日から継続して1kHzサンプリング連続データを取得している。観測開始から7月6日までの130日間で301個の地震を検知し、単点の地震計記録から粒子軌跡解析法によって震源を推定した(Fig.1)。深井戸の半径5kmの周辺ではマグニチュード-1程度の微小地震を検出している。また、予備のファイバを用い7月27日から8月4日までDASの連続観測を実施し、複数の自然地震を捉えることができた(Fig.2)。
3成分光加速度計のノイズレベルと周波数特性
3成分光加速度計の特性を示すため、ノイズスペクトルをFig.3に示す。比較のために観測点付近にあるF-net柏崎のノイズスペクトルも表示している。3成分光加速度計は、周波数が0.3Hzより高いところでは、HNMよりもレベルが低く、脈動をとらえることができているが、0.3Hzよりも低いところでは、F-netの記録に比べてノイズレベルが高いことがわかる。このやや長周期の部分の性能を改善することは喫緊の課題である。
結論
3成分光加速度計とDASの光ハイブリッドシステムは、100℃を超える高温環境でも1年にわたって安定動作し、光加速度計による微小地震の検出とDASによる地盤内伝達特性の解析ができることがわかった。さらに観測を継続し、光加速度計とDASを融合させた新たな解析手法の確立や長周期側の性能の改善に向けての開発を急ぎたい。
謝辞
新潟工科大学には、観測井および観測小屋を使用させていただくなど、多大な協力をいただきました。ここに記して感謝いたします。
参考文献
1. Yoshida et. al, Real-time displacement measurement system using phase-shifted optical pulse interferometry: Application to a seismic observation system, Jpn. J. Appl. Phys., vol.55 (2016) 022701.
2. 次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト 次世代火山推進事業 課題B2-2 成果報告書
https://www.kazan-pj.jp/reporting/research2021/b2-2