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[SVC30-06] 北中部九州滝上地熱フィールドにおける地熱探査
キーワード:地熱開発、超臨界水、DAS、滝上地熱地帯、VSP、SP変換
2022年5月大分県九重町の出光大分地熱(株)所有の滝上蒸気生産井(TP-2)を用いて地熱地帯の物理探査を行った。TP-2坑井の深さ2000 mの坑底付近まで光ファイバーを挿入した。この光ファイバーによる分布型温度センサー(DTS)と分布型振動センサー(DAS)を用い、温度と地震波を計測した。2000 mの坑底付近での温度は226℃であった。坑口からの深さ1000 m~1400 mは温度が緩やかに上昇し、これはシール層をつくる粘土鉱物の脱水の程度を示唆すると考えられる。滝上発電所の周囲12か所で人工震源を用い地震波を発生させそれをDASにより計測した。このDASと地表に設置した地震計の記録を用い地震波速度構造を求めた。その結果、滝上バイナリー発電所(生産1号基地)の付近を通る落差1000 mの南北走向の垂直断層があり、その東西で速度構造が異なる地下構造と解釈できることが分かった。この断層位置は、重力分布と地熱坑井により得られている地質構造(竹中ほか、1995)と整合的である。DAS波形では1000 m付近に阿地原層と滝上層の地層境界が見られる。DASの波形を用い反射波を抽出しマイグレーションイメージを作成した。その結果、深さ約1000 mの反射波は非常に強く、しかし場所によりその反射強度は異なる。深さ2000~3000 mにある深部の反射層は主に坑口の南西に位置している。深部の反射波は岩相の違いによるのではなく、断裂中の流体含有率の違いに起因するのであろう。DAS、地表地震計に記録された滝上発電所の南西20 km付近を震源とする自然地震ではDAS記録中にS波も記録されており、S波の到着の前にS波からP波へ変換した波(sP変換波)と解釈される。地表地震計の上下動、水平動にもこれに対応するsP変換波がみられる。この変換を生じた深さは1000 mおよび2500 m付近であると考えられる。この深さはDAS反射波のマイグレーション結果に見られる反射波の位置とほぼ一致する。本研究はNEDO超臨界地熱発電技術研究開発事業の一環として行った。謝意を表する。また、本調査にTP-2地熱坑井の使用と滝上地熱フィールドでの調査にご協力いただいた出光興産(株)、出光大分地熱(株)及びグループ各社に感謝を表する。調査にご協力をいただいた(株)WELMA、応用地質(株)、(株)阪神コンサルタンツに感謝する。