日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的火山

2023年5月22日(月) 10:45 〜 11:45 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:為栗 健(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、山本 圭吾(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)

11:00 〜 11:15

[SVC31-08] 超長周期帯域から見た桜島の爆発地震のソースメカニズム

*高橋 龍平1中道 治久2 (1.京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、2.京都大学防災研究所 火山活動研究センター)


1.はじめに
爆発地震は、爆発的な噴火に伴って発生する地震で、様々な火山で観測されている。桜島においては爆発地震が多数観測されてきた。桜島の爆発地震についての先行研究では、超長周期帯域の解析にて震源は火口直下の深さ1-2kmにあり,円筒震源モデルで観測波形が説明されている(Uhira and Takeo, 1994).Uhira and Takeo (1994)の波形インバージョン解析ではグリーン関数計算は半無限媒質を仮定して計算しており、地形効果の影響は考慮されていない。したがって,地形効果を考慮することで、より高精度にて震源位置とメカニズムが推定できる可能性がある。超長周期帯における地震波は地下構造の影響を受けにくいため、より正確な爆発地震の震源過程解析が行うことが出来る。超長周期帯域のシグナルは、地下のマグマや火山ガスなどの流体の移動によって生じるソースの体積変化を示唆しているとされる(e.g. Chouet and Matoza, 2013)。爆発地震の超長周期帯域のソースメカニズムを理解することで、噴火に関わるマグマの物性や噴火過程への理解につながる可能性がある。今回は、噴煙が火口縁上2000m以上上昇し、噴火時に監視カメラで2.4kmを超える噴石の飛散が観測された2022年7月24日20時05分の噴火のデータについて解析を実施した。

2.桜島で発生する超長周期地震と解析手法
 解析したイベントは超長周期帯域のシグナルが強く、SN比が上下動成分について全観測点で10超であり、稼働していた広帯域地震観測点数が最も多かった。解析イベントの振幅スペクトルについて、0.25Hzを境に高周波側は0.4-1Hz、2-4Hzでフラットなスペクトルを示していた。一方、低周波側は0.25Hzから0.125Hzまでフラットでそれより低周波側の0.067Hzに向けて落ち込むようなスペクトルを示している。そこで、低周波側の0.067-0.25Hzのバンドパスフィルタをかけた。この超長周期帯に対して波形インバージョン法(Ohminato et al., 1998; Auger et al., 2006)を用いてソースメカニズム解析を実施した。ソース位置は、グリッドサーチによって決定し、その際のサーチ範囲は爆発地震の震源位置の分布から(西村、2022)水平面において噴火口を囲むように東西に1600m、南北に1400m、深さ方向は地表付近から海抜下3000mに定めた。点震源を仮定し、ソースメカニズムとしてモーメントテンソル6成分+シングルフォース3成分、モーメントテンソル6成分、シングルフォース3成分、開口クラック、円筒震源の5つを仮定した。

3.解析結果及び議論
仮定したモデルのうち最も波形を説明していたのはモーメントテンソル6成分のメカニズムであり、その時の震源位置は南岳噴火口近くの地表から地下約200mで、先行研究(Uhira and Takeo,1994)よりも浅かった。先行研究で推定されていた円筒震源は、仮定したメカニズムの中で最も波形のフィッティングが悪かった。モーメントテンソル6成分の震源時間関数は、対角成分が卓越しており,非対角成分は小さい。震源時間関数の主成分の時間依存性は低く,メカニズムの時間変化はないことを意味する。モーメント6成分の主軸を求めると、(3.94, 1.39, 1.15)×1013 N mとなり,モーメント比は1.2:1:3.4である。弾性定数は、媒質である岩石が融点に近い場合はλ=2μ、そうでない場合λ=μとなる。λ=μの場合は1つのほぼ水平の開口クラックにて解釈できる.一方,λ=2μの場合はほぼ水平の開口クラックと、前者に対し21%の寄与をもつほぼ鉛直の開口クラックの2つの開口クラックの組み合わせで解釈できる。得られた震源時間関数は、収縮から膨張に移る様子を表している。このことから、収縮後にマグマ中の揮発成分の泡が膨張して圧力回復するというChouet et al.(2006)の気泡成長モデルと類似した現象が起こっていると推測される。


謝辞:国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所の観測坑道内の広帯域地震計記録を利用した。本研究は東京大学地震研究所共同利用(2022-M-15)の援助をうけた。記して感謝する。