16:00 〜 16:15
[SVC31-19] Sentinel-5p衛星TROPOMIセンサーと気象庁局地モデルによる二酸化硫黄放出率の監視と西之島の火山活動
キーワード:二酸化硫黄放出率、TROPOMI、西之島、気象庁局地解析
噴火期、非噴火期に限らず、マグマ活動を二酸化硫黄放出率で把握することは監視上重要である(風早・森,2016)。規模の大きな噴火や、海域火山においては、二酸化硫黄の観測は地上からよりも衛星観測が有効である。
欧州宇宙機関(ESA)により打ち上げられた極軌道衛星Sentinel-5pに搭載されたセンサーのTROPOMI(Veefkind et al., 2012)は、2018年以降、二酸化硫黄のカラムモル濃度(SCD)の分布図を毎日1回撮像している。一方、衛星と気象データを用いた二酸化硫黄の移流の把握手法は、Pardini et al. (2018)等によって開発されており、Queißer et al. (2019)等は、この手法をTROPOMIデータに用いてエトナ火山の二酸化硫黄放出活動について報告している。
本研究では、Pardini et al. (2018)の手法に準じ、気象データは日本周辺では精緻な気象庁局地解析値(LA)を用いた放出率推定を試みた。高度1km以上のカラムモル積算量が0.0025mol/m2以上となる格子の軌跡を、LAによって毎時の後方追跡計算で遡り、西之島近傍に戻ったものを西之島放出二酸化硫黄とみなして、1日あたりの放出率とした。西之島に戻らない格子数の割合は平均で40%であったが、総モル数の割合では3%であり、後方追跡計算により概ね捕捉できていることを示す。また、この解析による捕捉率は、初期時刻(撮像時刻)から概ね7時間を超えると捕捉率が悪化した。これは初期値誤差が拡大したためと想像される。また、西之島周辺での捕捉格子のSCDの低下がみられた。これは、二酸化硫黄が時間の経過とともに拡散し、検出できる格子数が減少したものと予想される。このため、放出率の計算は初期時刻から7時間の平均とした。
この手法により西之島の二酸化硫黄放出率を計算したところ、2022年7月頃より放出が観測され始め、9月下旬に増大して10月上旬には10,000トン/日を超えたが、その後低下した。2023年1月現在も1,000トン/日で推移している。今回の噴火活動(2022年7月以降)の二酸化硫黄の総放出量は、110,000トンであり、前回の2021年8月噴火活動の5,000トンよりもはるかに大きい。しかし、2019~2020年の噴火活動の850,000トンよりははるかに小さい。多量の溶岩噴出により現在の西之島を形作った時期である2014~2018年の二酸化硫黄放出率は、海上からの観測では1,000トン/日未満であった(高木,2018)ことを考えると、2019年に形成された多量の二酸化硫黄を生成システムは、現在も維持されている可能性がある。
欧州宇宙機関(ESA)により打ち上げられた極軌道衛星Sentinel-5pに搭載されたセンサーのTROPOMI(Veefkind et al., 2012)は、2018年以降、二酸化硫黄のカラムモル濃度(SCD)の分布図を毎日1回撮像している。一方、衛星と気象データを用いた二酸化硫黄の移流の把握手法は、Pardini et al. (2018)等によって開発されており、Queißer et al. (2019)等は、この手法をTROPOMIデータに用いてエトナ火山の二酸化硫黄放出活動について報告している。
本研究では、Pardini et al. (2018)の手法に準じ、気象データは日本周辺では精緻な気象庁局地解析値(LA)を用いた放出率推定を試みた。高度1km以上のカラムモル積算量が0.0025mol/m2以上となる格子の軌跡を、LAによって毎時の後方追跡計算で遡り、西之島近傍に戻ったものを西之島放出二酸化硫黄とみなして、1日あたりの放出率とした。西之島に戻らない格子数の割合は平均で40%であったが、総モル数の割合では3%であり、後方追跡計算により概ね捕捉できていることを示す。また、この解析による捕捉率は、初期時刻(撮像時刻)から概ね7時間を超えると捕捉率が悪化した。これは初期値誤差が拡大したためと想像される。また、西之島周辺での捕捉格子のSCDの低下がみられた。これは、二酸化硫黄が時間の経過とともに拡散し、検出できる格子数が減少したものと予想される。このため、放出率の計算は初期時刻から7時間の平均とした。
この手法により西之島の二酸化硫黄放出率を計算したところ、2022年7月頃より放出が観測され始め、9月下旬に増大して10月上旬には10,000トン/日を超えたが、その後低下した。2023年1月現在も1,000トン/日で推移している。今回の噴火活動(2022年7月以降)の二酸化硫黄の総放出量は、110,000トンであり、前回の2021年8月噴火活動の5,000トンよりもはるかに大きい。しかし、2019~2020年の噴火活動の850,000トンよりははるかに小さい。多量の溶岩噴出により現在の西之島を形作った時期である2014~2018年の二酸化硫黄放出率は、海上からの観測では1,000トン/日未満であった(高木,2018)ことを考えると、2019年に形成された多量の二酸化硫黄を生成システムは、現在も維持されている可能性がある。