日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的火山

2023年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:高木 朗充(気象庁気象研究所)、嶋野 岳人(常葉大学大学院環境防災研究科)

16:15 〜 16:30

[SVC31-20] 西之島に設置されていたカメラと共に回収された火山礫に記録されていた、2021年以降の西之島マグマ活動

*吉田 健太1多田 訓子1佐藤 智紀1田中 えりか1浜田 盛久1田村 芳彦1小野 重明1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:西之島、ドローン、調査航海

海洋研究開発機構では2022年8月14日から27日にかけて,調査船「よこすか」を用いて,小笠原弧の西之島・福徳岡ノ場を対象としたYK22-15航海を実施した.本航海では,海洋地質調査を目的としたディプレッサ曳航体+さつき型ドレッジャの二段階曳航ドレッジを実施すると共に,ドローンを用いた西之島の活動状況調査を行った.加えて,8月17日には2021年9月にNHKが設置した定点カメラの回収を行った.島内西部の沿岸付近に設置された定点カメラは,西之島の山頂を撮影する目的だったが,一定期間の後に転倒していたことが判明している.
回収されたカメラには多量の火山灰が付着しており,パーツの隙間に最大5mm程度の火山礫が捕獲されていた.産状から,この火山礫は2021年9月から2022年8月の間に起きた火山活動で放出された可能性が極めて高い.本研究では時系列的な素性が明らかである火山礫の岩石学的記載を行い,2022年の最新の西之島の火山活動を検討する.
火山礫は多量のマイクロライトの間を火山ガラスが埋める石基と,かんらん石,単斜輝石,斜長石,磁鉄鉱の斑晶からなる.かんらん石はFo72のコアを持ち,リムでFo値が65まで下がる.単斜輝石はMg#~80の普通輝石である.また,斜長石の多くはAn70前後で振動累帯構造を持つが,縁部ではAn60程度になる.更に,100μmを超える粗粒なものは稀にAn96のコアを持つ.
石基ガラスはSiO2=76%程度の流紋岩組成を示す一方で,単斜輝石・かんらん石に含まれるメルト包有物はSiO2=60%程度の安山岩組成を示す.安山岩組成メルトの組成は報告されている西之島第4期活動のもの[1]と対比出来る一方で,流紋岩組成メルトのSiO2量は西之島第1-3期活動のものより有意に高い.
石基に見られる磁鉄鉱および斜長石マイクロライトと石基ガラスの平衡から見積もられる温度は約950°Cである一方で,単斜輝石・かんらん石とメルト包有物からは1000°Cの温度を得た.
以上の観察から,2019-2020年の爆発的な噴火を経たあとの西之島では,これまでよりSiO2に富むのマグマの蓄積と,より高温の安山岩質のマグマの注入で特徴付けられる火山活動が起こっている可能性がある.

[1] https://doi.org/10.3389/feart.2021.773819