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[SVC31-P12] 海に沈む軽石の空隙率測定:福徳岡ノ場2021年噴火の例
キーワード:福徳岡ノ場2021年噴火、漂流軽石、空隙率測定、軽石浮遊性
福徳岡ノ場2021年噴火をきっかけに多くの分野で漂流軽石現象が関心を集めている。竹内ほか(2022)では、沖縄本島で採集された福徳岡ノ場2021年噴火の浮遊軽石の全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率を擬似流体置換法とガス置換法により測定し、岩石学的検討を行った。その結果、浮遊軽石は特徴的に孤立空隙率が多く、連結空隙が海水に飽和しても沈まない空隙特性をミリからセンチ粒径で持っていること、粒径が小さくなるにつれ斑晶を失った粒子が浮遊していることが明らかになった。本論ではこのような浮遊軽石を不沈浮遊軽石と呼ぶ。
本研究では海水中を沈降する軽石について竹内ほか(2022)と同様の方法で空隙率と岩石学的特徴を調べた。いずれも粒子成分として支配的な灰色軽石の内、0.001―1 cm3の体積(1―11.2 mm直径相当)を持つ粒子を対象とした。採集後、海水とともに容器に保管した浮遊軽石の中からは、しばらくすると沈降する軽石が生じる。このような軽石は、連結空隙内に閉じ込められた空気が十分ある限り、ある時間、浮遊し、連結空隙内の空気が抜けると沈降を開始すると考えられる(Fauria et al., 2017)。自然界でもこのような粒子が発生していると考えられるが採集は困難である。本研究では、このような軽石を採集後沈降軽石と呼び、検討対象とした。浮遊軽石の中での採集後沈降軽石の割合を定量化することは難しいが、浮遊軽石として無作為抽出して空隙率測定した26個の軽石の中では1個を除き、不沈浮遊軽石であった(竹内ほか、2022)。このことは、採集後沈降軽石の存在割合は小さいことを示唆している。
不沈浮遊軽石と採集後沈降軽石はそれぞれ73―84%と71―85%の全空隙率を持ち、大きな違いはない。不沈浮遊軽石の連結空隙率は22―52%であるのに対し、採集後沈降軽石の多くは33―83%で、採集後沈降軽石は不沈浮遊軽石よりもやや高い連結空隙率を持つ傾向がある。空隙率データに基づき計算された最大含水密度(連結空隙が海水に飽和する条件での密度)は、海水の密度よりも低い不沈浮遊軽石と、海水の密度よりも高い採集後沈降軽石に分かれた。0.1―0.5 cm3の体積を持つ採集後沈降軽石について浮遊時間(乾燥状態で海水面に浮かべ沈降を開始するまでの時間)の測定を行った結果、最も短い粒子は52日で沈降、長い粒子は5か月を経ても浮遊を続けている。
採集後沈降軽石も福徳岡ノ場2021年噴火に由来し、千 kmを越える距離を漂流し沖縄に到達した物質である。また浮遊軽石の採集は沖縄の海岸付近で行ったため、採集された浮遊軽石は沖縄での陸上への漂着、海への再度の漂流を何回か経験している可能性がある。噴火から沖縄到達までのタイムスケール(約2か月)よりも短い浮遊時間を持つ採集後沈降軽石が浮遊軽石として沖縄で採集されたことから、より大きな浮遊軽石の分裂・摩耗が噴火後の漂流・漂着過程で起こり、孤立空隙率がやや低い採集後沈降軽石が生産される過程が示唆される。採集後沈降軽石が生産される過程は、不沈浮遊軽石が時間をかけて沈降軽石となり、海面から消失していくメカニズムを考える上で重要である。
不沈浮遊軽石と採集後沈降軽石の骨格密度(固相と孤立空隙を合わせた部分に相当する密度)は海水の密度より低い値と高い値にそれぞれ分かれる。過去の漂流軽石の研究(例えばManga et al., 2018; Mitchell et al., 2021)においても、ガス置換法により骨格密度は測定されているが明示されたことはない。本研究では骨格密度が軽石の浮遊沈降性を測る重要な指標であることを強調したい。
本研究では海水中を沈降する軽石について竹内ほか(2022)と同様の方法で空隙率と岩石学的特徴を調べた。いずれも粒子成分として支配的な灰色軽石の内、0.001―1 cm3の体積(1―11.2 mm直径相当)を持つ粒子を対象とした。採集後、海水とともに容器に保管した浮遊軽石の中からは、しばらくすると沈降する軽石が生じる。このような軽石は、連結空隙内に閉じ込められた空気が十分ある限り、ある時間、浮遊し、連結空隙内の空気が抜けると沈降を開始すると考えられる(Fauria et al., 2017)。自然界でもこのような粒子が発生していると考えられるが採集は困難である。本研究では、このような軽石を採集後沈降軽石と呼び、検討対象とした。浮遊軽石の中での採集後沈降軽石の割合を定量化することは難しいが、浮遊軽石として無作為抽出して空隙率測定した26個の軽石の中では1個を除き、不沈浮遊軽石であった(竹内ほか、2022)。このことは、採集後沈降軽石の存在割合は小さいことを示唆している。
不沈浮遊軽石と採集後沈降軽石はそれぞれ73―84%と71―85%の全空隙率を持ち、大きな違いはない。不沈浮遊軽石の連結空隙率は22―52%であるのに対し、採集後沈降軽石の多くは33―83%で、採集後沈降軽石は不沈浮遊軽石よりもやや高い連結空隙率を持つ傾向がある。空隙率データに基づき計算された最大含水密度(連結空隙が海水に飽和する条件での密度)は、海水の密度よりも低い不沈浮遊軽石と、海水の密度よりも高い採集後沈降軽石に分かれた。0.1―0.5 cm3の体積を持つ採集後沈降軽石について浮遊時間(乾燥状態で海水面に浮かべ沈降を開始するまでの時間)の測定を行った結果、最も短い粒子は52日で沈降、長い粒子は5か月を経ても浮遊を続けている。
採集後沈降軽石も福徳岡ノ場2021年噴火に由来し、千 kmを越える距離を漂流し沖縄に到達した物質である。また浮遊軽石の採集は沖縄の海岸付近で行ったため、採集された浮遊軽石は沖縄での陸上への漂着、海への再度の漂流を何回か経験している可能性がある。噴火から沖縄到達までのタイムスケール(約2か月)よりも短い浮遊時間を持つ採集後沈降軽石が浮遊軽石として沖縄で採集されたことから、より大きな浮遊軽石の分裂・摩耗が噴火後の漂流・漂着過程で起こり、孤立空隙率がやや低い採集後沈降軽石が生産される過程が示唆される。採集後沈降軽石が生産される過程は、不沈浮遊軽石が時間をかけて沈降軽石となり、海面から消失していくメカニズムを考える上で重要である。
不沈浮遊軽石と採集後沈降軽石の骨格密度(固相と孤立空隙を合わせた部分に相当する密度)は海水の密度より低い値と高い値にそれぞれ分かれる。過去の漂流軽石の研究(例えばManga et al., 2018; Mitchell et al., 2021)においても、ガス置換法により骨格密度は測定されているが明示されたことはない。本研究では骨格密度が軽石の浮遊沈降性を測る重要な指標であることを強調したい。