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[SVC35-P13] 時間‐積算噴出量階段図の統一作成手順の提案:次世代火山研究プロジェクト、サブ課題C-2の成果とりまとめに向けて
キーワード:次世代火山研究プロジェクト、時間‐積算噴出量階段図、階段図、火山噴火、噴火履歴
1.はじめに
火山噴火の噴出量と噴火間隔の関係を示した時間‐積算噴出量階段図(以下,階段図)は、個々の火山の噴火履歴を網羅的に示すことができるダイアグラムであり、火山の長期的な活動度を評価するために重要である。その観点から、次世代火山研究プロジェクト(火山PJ)のサブ課題C-2(噴火履歴調査による火山噴火の中長期予測と噴火推移調査に基づく噴火事象系統樹の作成)では、研究対象火山の噴火履歴を明らかにして、個々の火山でまずは階段図を作成することにしている。その階段図はNakamura (1964)が伊豆大島で作成して以来、多くの火山で作成が試みられているが、その様式や作成手法は様々であり統一されていない。しかしながら階段図を用いて、様々な火山での活動度評価と中長期の噴火予測を同じ基準で行うためには、同じ様式で質の揃った階段図を作成することが必要である。そこでサブ課題C-2では、その階段図および噴火事象系統樹の作成指針と、そのためのデータベースの作成手法について、ワーキンググループにより議論した。本発表では、この議論によりまとめた階段図作成手順を紹介する。
2.階段図データベース
それぞれの火山において、個々の噴火について統一された様式のデータベース(階段図データベース)を作成し、それを用いて階段図を作成する。階段図データベースの基本となる、噴火の定義、噴火年代については以下の基準で整理する。
1)噴火はテフラおよび山体構成物(溶岩流・ドームおよび火砕丘など)を噴出物として放出する活動で、単発ないし一連の噴火活動を1回の噴火として認識する。山体崩壊のみの活動も噴火とみなす。噴火がある期間に散発する場合には、1年以上の休止があった場合には、それぞれを別の噴火とみなす。
2)テフラと山体構成物が対比できない場合には、それぞれ独立した噴火として取り扱う。
3)噴火年代が精度良く決められない噴出物については、階段図ではある時間幅の活動とみなす。データベースにはその幅の中間値を噴火年代とし、備考に年代幅を記す。
4)個々の噴火のデータについては、以下の4ランクのデータとして区分する。それらは、記録されている噴火(Aランク)、記録はないが噴火年代・推移が地質学的手法等で解明できる噴火(Bランク)、地質図で噴出物がマッピングできる程度の情報量がある噴火(Cランク)、そしてある活動期(ステージ)として把握できる噴火(Dランク)である。
上記の基準で整理された噴火について、階段図データベースに収録するデータとしては、噴火(ステージ)名、データランク(上記のA~Dのランク区分)、噴火年代(年代値および測定手法)、活動期間、噴火様式・堆積物の種類、噴出量や岩石学的性質などがある。これらのデータについても、それぞれのデータ取得方法、計算方法や表示形式等についても、細かくガイドラインを示している。
3.階段図
階段図は以下の様式に従って作成する。
(1)階段図は長期と短期の2種類をセットで作成する。長期階段図は、ある火山の活動開始から現在までの時間幅で、上記のA~Dランクのデータを用いて作成する。短期階段図は比較的新しい活動時期から現在までのある期間を対象として作成され、噴火事象系統樹を作成する基礎となるものである。短期階段図の期間での個々の噴火は、その年代や噴火推移がかなりのレベルで明らかになっている必要があり、可能な限り上記のAおよびBランクのデータを用いて階段図を作成する。
2)階段図は次の3タイプの形式のものをセットで作成する。それらは、テフラのみを対象とするもの、溶岩流・溶岩ドームや火砕丘などの山体構成物のみを対象とするもの、そして両者を統合したものである。
4.まとめ
本発表では階段図データベースの様式と階段図作成手法について、試作版として2~3の火山の実例を交えて紹介する。今後、作成する個々の火山における階段図データベースと階段図については、学術誌等で公表することはもちろんであるが、それに加えてJVDNシステムにも掲載する予定である。これらの階段図はサブ課題C-2だけではなく、関連するサブ課題等で活用されることが期待できる。またサブ課題C-2では、作成した階段図・データベースをもとに、噴火事象系統樹の作成を進めてゆく予定である。
火山噴火の噴出量と噴火間隔の関係を示した時間‐積算噴出量階段図(以下,階段図)は、個々の火山の噴火履歴を網羅的に示すことができるダイアグラムであり、火山の長期的な活動度を評価するために重要である。その観点から、次世代火山研究プロジェクト(火山PJ)のサブ課題C-2(噴火履歴調査による火山噴火の中長期予測と噴火推移調査に基づく噴火事象系統樹の作成)では、研究対象火山の噴火履歴を明らかにして、個々の火山でまずは階段図を作成することにしている。その階段図はNakamura (1964)が伊豆大島で作成して以来、多くの火山で作成が試みられているが、その様式や作成手法は様々であり統一されていない。しかしながら階段図を用いて、様々な火山での活動度評価と中長期の噴火予測を同じ基準で行うためには、同じ様式で質の揃った階段図を作成することが必要である。そこでサブ課題C-2では、その階段図および噴火事象系統樹の作成指針と、そのためのデータベースの作成手法について、ワーキンググループにより議論した。本発表では、この議論によりまとめた階段図作成手順を紹介する。
2.階段図データベース
それぞれの火山において、個々の噴火について統一された様式のデータベース(階段図データベース)を作成し、それを用いて階段図を作成する。階段図データベースの基本となる、噴火の定義、噴火年代については以下の基準で整理する。
1)噴火はテフラおよび山体構成物(溶岩流・ドームおよび火砕丘など)を噴出物として放出する活動で、単発ないし一連の噴火活動を1回の噴火として認識する。山体崩壊のみの活動も噴火とみなす。噴火がある期間に散発する場合には、1年以上の休止があった場合には、それぞれを別の噴火とみなす。
2)テフラと山体構成物が対比できない場合には、それぞれ独立した噴火として取り扱う。
3)噴火年代が精度良く決められない噴出物については、階段図ではある時間幅の活動とみなす。データベースにはその幅の中間値を噴火年代とし、備考に年代幅を記す。
4)個々の噴火のデータについては、以下の4ランクのデータとして区分する。それらは、記録されている噴火(Aランク)、記録はないが噴火年代・推移が地質学的手法等で解明できる噴火(Bランク)、地質図で噴出物がマッピングできる程度の情報量がある噴火(Cランク)、そしてある活動期(ステージ)として把握できる噴火(Dランク)である。
上記の基準で整理された噴火について、階段図データベースに収録するデータとしては、噴火(ステージ)名、データランク(上記のA~Dのランク区分)、噴火年代(年代値および測定手法)、活動期間、噴火様式・堆積物の種類、噴出量や岩石学的性質などがある。これらのデータについても、それぞれのデータ取得方法、計算方法や表示形式等についても、細かくガイドラインを示している。
3.階段図
階段図は以下の様式に従って作成する。
(1)階段図は長期と短期の2種類をセットで作成する。長期階段図は、ある火山の活動開始から現在までの時間幅で、上記のA~Dランクのデータを用いて作成する。短期階段図は比較的新しい活動時期から現在までのある期間を対象として作成され、噴火事象系統樹を作成する基礎となるものである。短期階段図の期間での個々の噴火は、その年代や噴火推移がかなりのレベルで明らかになっている必要があり、可能な限り上記のAおよびBランクのデータを用いて階段図を作成する。
2)階段図は次の3タイプの形式のものをセットで作成する。それらは、テフラのみを対象とするもの、溶岩流・溶岩ドームや火砕丘などの山体構成物のみを対象とするもの、そして両者を統合したものである。
4.まとめ
本発表では階段図データベースの様式と階段図作成手法について、試作版として2~3の火山の実例を交えて紹介する。今後、作成する個々の火山における階段図データベースと階段図については、学術誌等で公表することはもちろんであるが、それに加えてJVDNシステムにも掲載する予定である。これらの階段図はサブ課題C-2だけではなく、関連するサブ課題等で活用されることが期待できる。またサブ課題C-2では、作成した階段図・データベースをもとに、噴火事象系統樹の作成を進めてゆく予定である。