日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC35] 次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト

2023年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:中川 光弘(北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門地球惑星システム科学講座)、上田 英樹(防災科学技術研究所)、大湊 隆雄(東京大学地震研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[SVC35-P16] 市街地における建物影響による降灰分布の不均一性について

*大塚 清敏1、野畑 有秀1、諏訪 仁1久保 智弘2宮城 洋介3 (1.株式会社大林組、2.山梨県富士山科学研究所、3.防災科学技術研究所)

キーワード:降灰シミュレーション、市街地、建物影響

市街地では建物によって気流が乱されるため,上空からの降灰が一様であっても地面や都市キャノピー内の降灰の強さや火山灰の空間濃度には不均一性が生じる可能性が高い。降灰の被害想定は通常広域の降灰量分布予測に基づいて行わるが,広域予測に用いられる数値モデル1)の水平格子分解能は多くは数km程度であり,予測量はその程度の大きさの格子平均量である。そのため,市街地での被害予測を適切に行うには,広域予測の格子より小さい空間スケールの降灰の変動を把握する必要がある。ここでは,個々の建物を粗くではあるが表現できる程度の細かい分解能で,狭い範囲の降灰計算を行い,市街地における降灰の小スケールの変動の程度について調べる。
用いる数値モデルはEuler形式で書かれた粒径別の火山灰粒子の運動方程式,空間濃度の輸送方程式からなり,粒子の重力沈降,空気との間の摩擦抵抗が含まれている。計算領域は,低層建物が密集する,東西200m×南北280mの範囲の実市街地を模擬し,水平解像度2mで領域分割したものとした。鉛直方向の分割は地面から高度40mまでを1m間隔で,それより上空は,分割間隔は領域上端の高度450mまで滑らかに増加するとした。計算領域上端及び側面境界から単位濃度の火山灰粒子を風速と終端落下速度のベクトル和の速度で流入させ,領域内部の粒子の速度,空間濃度を計算する。地上における降灰強度,降灰の空間濃度は,建物のない水平面上への一様降灰に対する比率として無次元量で表現される。計算は,16風向それぞれについて,粒径62.5, 125 , 250, 500, 1000, 2000μmに対して定常状態になるまで行った。その結果以下のことがわかった。
地面での降灰強度分布は,粒径が小さい程不均一性が大きく,どの風向にも共通していた。建物近傍での気流の変化に対し,同じ密度の粒子ならば粒径が小さい方が大きいものよりも気流変化に追随しやすいということが関係している。地面の10~20%では無次元降灰強度が1.2を超えおり,1.4を超えている部分も数%あった。また,建物空調設備への降灰影響では,吸気口が多く配置される建物側壁や屋上近傍での火山灰空間濃度が重要であるが2),建物表面に隣接する格子点での空間濃度も地面降灰強度と同様の値の範囲を示していた。広域の降灰予測モデルの個々の格子の内部の降灰は,建物のない平坦面の一様降灰と見なせるので,ここでの計算結果は,広域予測の降灰の1.4~1.5倍程度は小スケールの変動として見込むのが望ましいことを示唆している。
1)Dare, R.A., 2015, CSIRO, CAWCR Tech. Rep. No.79 34pp. 2)大塚等(2020), JpGU-AGU Joint Meeting 2020, S-VC46-04,