14:00 〜 14:15
[U11-02] 令和元年東日本台風に伴う豪雨のメカニズムについて
★招待講演
キーワード:台風、Xバンドレーダ、豪雨
令和元年東日本台風に伴う大雨により、千曲川や阿武隈川などの一級河川をはじめとして、100箇所を超える氾濫が発生し、広域水害となった。このような広域水害は、どのような降水システムによってもたらされたのであろうか?この問いに答えるため、Xバンド偏波レーダによる5分間隔のRHIスキャンデータと、地上に設置された光学式ディスドロメータによる観測データを用いて、令和元年東日本台風の降水過程を解析した。その結果、上空に明瞭な融解層が存在し、0℃高度より下層では雨滴の直径と雨水量が急激に増加していた。また下層には浅い対流を示唆するセル状エコーが存在していた。このことは,台風の降雨帯において、上層から落ちてきた雨滴が下層で発達した浅い対流雲の中で雲粒捕捉成長するとともに、多数の小さな雨滴が供給されて,降水が強まったことを示唆している。このように「上層から落ちてきた雨滴が,下層で発達した浅い対流雲の中で雲粒捕捉成長する」現象は、一般に「シーダ・フィーダ相互作用」と呼ばれており、通常は山地で発生する豪雨の原因となる。ところが令和元年東日本台風では、平地においてもシーダ・フィーダ相互作用が起こり、それが広範囲の大雨につながった。つまり過去の台風災害では主に山地で起こっていた豪雨発生機構が、今回は平地で働いたことになる。このようにして平地を含む広範囲で大雨降ったことが、流域面積の広い一級河川等の氾濫の一因になったと考えられる。
「豪雨は積乱雲が引き起こす」とよく言われるが、浅い対流を含んだ「層状性降水」が豪雨を引き起こしたことが示唆された。秋期に接近・上陸する台風は,前線との相互作用によって広範囲の層状性降水がもたらされ、本事例と同様のメカニズムで広範囲の大雨が発生する可能性があり、今後も注意が必要である。
「豪雨は積乱雲が引き起こす」とよく言われるが、浅い対流を含んだ「層状性降水」が豪雨を引き起こしたことが示唆された。秋期に接近・上陸する台風は,前線との相互作用によって広範囲の層状性降水がもたらされ、本事例と同様のメカニズムで広範囲の大雨が発生する可能性があり、今後も注意が必要である。