17:15 〜 18:45
[AAS02-P05] ひまわり8号赤外分光イメージングによる全天候型大気場プロダクトの同化に伴う大雨予測の改善
★招待講演

キーワード:静止衛星、衛星リトリーバル、衛星データ同化、観測システム実験
静止気象衛星による観測は、メソスケールから総観規模まで多様な時空間スケールの擾乱を捉えることが出来、潤沢な情報量を有す。気象予測の改善において、そのような観測情報を利用し、効率よく同化することが望まれる。近年、雲の情報を取り入れるべく、赤外全天輝度温度の同化に対する研究が盛んに行われてきた。それでも、薄い上層雲がある時は予測モデルにおける雲氷量の再現性や観測演算子となる放射伝達モデルの表現力に問題があり同化が難しい。最近、ひまわり8号の赤外多波長観測から全天候で気温・湿度とそれらの不確定性を推定する統計的手法が提案された。この手法では、赤外画像に現れる雲や水蒸気の空間分布の特徴や分光特性を使うことで、雲域でも安定的にかつ精度高く気温と湿度の三次元分布を推定することが出来る。この手法で算出したプロダクトを同化に利用することで、赤外多波長の観測を雲頂より下部に同化することが出来る。本研究では、開発したプロダクトの同化への利用可能性を検討するため、2018年7月に西日本で大雨をもたらした事例に対して観測システム実験を行った。
雲頂より下部における同化が大雨予測に有効であるか確かめるため、何も同化しない実験、雲頂より上部のみにプロダクトを同化した実験、雲頂より下部を含めて全域にプロダクトを同化した実験を比較した。雲頂より下部の領域は、プロダクトで算出される気温がひまわり8号の輝度温度より高くなる領域と定義した。予報モデルには、日本域を対象とした5 km解像度の気象庁の非静力学モデルを用い、側面境界値にJRA-55を与えた。同化は局所アンサンブル変換カルマンフィルターを用いて、プロダクトを水平方向100 km間隔に間引き、1時間ごとに行った。実験期間は7月1日から8日までとした。降水予測の精度は、気象庁の解析雨量を真値として、3時間降水量に対するエクイタブルスレットスコア(ETS)によって評価した。
ETSは全域にプロダクトを同化した実験が最も高く、降水の位置が改善していた。その値は、3時間降水量が10 mmを閾値とした時、何も同化しない実験と比べると0.1程度高く、雲頂より上部のみにプロダクトを同化した実験と比べると0.05程度高かった。本プロダクトにおける気温と湿度の同化は、水平風の予測改善にも波及しており、雲頂より上部のみに同化しただけでも温度風平衡を介して梅雨前線の位置が改善していることが確認された。雲頂より下に本プロダクトを同化すると、赤外輝度温度の空間分布は、雲頂より上部に同化する場合と比べて観測に近づく。提案されたプロダクトを雲域を含めて同化することは、降水の予測の改善において大きく寄与する。
雲頂より下部における同化が大雨予測に有効であるか確かめるため、何も同化しない実験、雲頂より上部のみにプロダクトを同化した実験、雲頂より下部を含めて全域にプロダクトを同化した実験を比較した。雲頂より下部の領域は、プロダクトで算出される気温がひまわり8号の輝度温度より高くなる領域と定義した。予報モデルには、日本域を対象とした5 km解像度の気象庁の非静力学モデルを用い、側面境界値にJRA-55を与えた。同化は局所アンサンブル変換カルマンフィルターを用いて、プロダクトを水平方向100 km間隔に間引き、1時間ごとに行った。実験期間は7月1日から8日までとした。降水予測の精度は、気象庁の解析雨量を真値として、3時間降水量に対するエクイタブルスレットスコア(ETS)によって評価した。
ETSは全域にプロダクトを同化した実験が最も高く、降水の位置が改善していた。その値は、3時間降水量が10 mmを閾値とした時、何も同化しない実験と比べると0.1程度高く、雲頂より上部のみにプロダクトを同化した実験と比べると0.05程度高かった。本プロダクトにおける気温と湿度の同化は、水平風の予測改善にも波及しており、雲頂より上部のみに同化しただけでも温度風平衡を介して梅雨前線の位置が改善していることが確認された。雲頂より下に本プロダクトを同化すると、赤外輝度温度の空間分布は、雲頂より上部に同化する場合と比べて観測に近づく。提案されたプロダクトを雲域を含めて同化することは、降水の予測の改善において大きく寄与する。
