日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 気象学一般

2024年5月27日(月) 15:30 〜 16:45 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、Sugimoto Shiori(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、Shiori Sugimoto(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

15:45 〜 16:00

[AAS08-07] MAX-DOAS法による大気下層水蒸気濃度の水平不均一性の長期連続観測

*溝渕 隼也1入江 仁士1清水 慎吾2 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、2.防災科学技術研究所)

キーワード:水蒸気、地上リモートセンシング

2017年から2022年までの6年間、我々はつくばと千葉において多軸差分吸収分光法 (MAX-DOAS; Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopy) による大気下層の水蒸気濃度の長期連続観測を実施した。MAX-DOAS法は太陽光を光源とする受動型の地上リモートセンシング技術であり、比較的安価で連続観測を行うことができる。千葉においては、東西南北の4方位にMAX-DOASの観測視線を向けたシステム (4AZ-MAXDOAS) による観測を行った。これらの観測から得られたデータを用いて、大気の不安定性と大気下層水蒸気濃度の水平不均一性の関係を調べた。大気の安定性を示す指標であるL指数 (LI; Lifted Index) を解析したところ、大気が不安定な時に水蒸気の水平分布の不均一性が増大する傾向がみられた。この解析を踏まえて、大気が特に不安定で水蒸気の水平不均一性が顕著に大きかった26事例を特定した。このうち20事例では日本上空に停滞前線が発生していた。さらに、これらの事例の中で最も水蒸気の水平不均一性が大きかった事例について、気象庁の局地解析 (LA; Local Analysis) を実施した結果、実際に南西方向からの暖湿流の流入が起きており、この流入が水蒸気の顕著な水平方向の不均一性をもたらしていることが示唆された。このように、MAX-DOAS法を用いた大気下層水蒸気の水平不均一性の観測は従来の観測とは異なる重要な情報を提供し、ラジオゾンデなどとの相補的な利用を通じて、より精密なデータ同化技術の開発や、集中豪雨の早期警戒システムへの応用、予測の精度向上に貢献することが期待される。