16:15 〜 16:30
[AAS08-09] Ku 帯二重偏波気象レーダによる降水強度推定精度の検証
キーワード:気象レーダ、降雨、Ku帯、二重偏波
現在、日本には60基近くの気象レーダが整備され、近年では二重偏波機能の付加による降水量推定精度の向上といった高機能化が進められている。一方で、竜巻や集中豪雨といった局所的・突発的な気象現象はその予測が今日においても難しく、その被害は後が絶たない。このような被害を減らすには、これら局地的異常気象の予測・早期発見、そして原理解明が必要であり、既存気象レーダ網を更に細分化し、時間的・空間的に高分解能な中距離レーダを配置することが望ましい。以上の背景より、当研究グループでは、Ku帯二重偏波気象レーダの開発が行われてきた。このレーダは送信周波数に、日本で現在運用されている気象レーダ (C帯: 5 GHz、X帯: 9.7 GHz) に比べ高周波なKu帯 (15.75 GHz) を採用した中距離・高分解能レーダである (観測範囲半径20 km、時間分解能1分、最高距離分解能2.4 m)。 現状、日本において Ku 帯二重偏波レーダによる観測事例は少なく、その降水強度推定手法およびその精度は確立されていない。そこで、本研究ではKu帯二重偏波レーダの観測において、3手法 (Z-R法 [1]、Z-KDP法 [2]、 Z-PHI法 [3]) を用いて降水強度推定をそれぞれ行い、地上雨量計である光学式ディスドロメータの観測値と比較することで精度検証を行った。
精度検証の結果、Z-R法による推定は、0ー2 mm/h 程度の降雨は推定可能だが、それ以上の降雨になると減衰の影響を受け過小推定となった。Z-KDP法による推定は、強雨域でS/Nが高い場合推定が可能で、局所的、短期的な強雨も観測可能であることがわかったが、弱雨域ではS/Nが下がり特に3 mm/h以下では推定が困難であることがわかった。Z-PHI法による推定では、降雨パターンに依らず0ー10 mm/h 程度の降雨は安定して推定可能であることがわかった。一方で、局所的、短期的な強雨は過小評価する傾向にあるため、Z-KDP法との併用が望ましいのではないかと考える。今後は以上の結果を踏まえ、Ku帯二重偏波気象レーダの降水強度算出アルゴリズムについて検討し、高精度観測を目指す。
[1] J.S.Marshall, R.C.Langille, and W.M.K.Palmer, “Measurement of rainfall by radar”, Journal of Meteorology, vol.4, no.6, pp.186-192, 1947.
[2] Haonan C. and V. Chandrasekar, “Estimation of light rainfall using Ku-band dual-polarization radar”, IEEE Trans. on Geoscience and Remote Sensing, vol.53(9), pp. 5197-5208, 2015.
[3] J.Testud, E.L.Bouar, E.Obligis, and M.Ali-Mehenni, “The rain profiling algorithm applied to polarimetric weather radar”, Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, vol.17, no.3, pp.332-356, 2000.
精度検証の結果、Z-R法による推定は、0ー2 mm/h 程度の降雨は推定可能だが、それ以上の降雨になると減衰の影響を受け過小推定となった。Z-KDP法による推定は、強雨域でS/Nが高い場合推定が可能で、局所的、短期的な強雨も観測可能であることがわかったが、弱雨域ではS/Nが下がり特に3 mm/h以下では推定が困難であることがわかった。Z-PHI法による推定では、降雨パターンに依らず0ー10 mm/h 程度の降雨は安定して推定可能であることがわかった。一方で、局所的、短期的な強雨は過小評価する傾向にあるため、Z-KDP法との併用が望ましいのではないかと考える。今後は以上の結果を踏まえ、Ku帯二重偏波気象レーダの降水強度算出アルゴリズムについて検討し、高精度観測を目指す。
[1] J.S.Marshall, R.C.Langille, and W.M.K.Palmer, “Measurement of rainfall by radar”, Journal of Meteorology, vol.4, no.6, pp.186-192, 1947.
[2] Haonan C. and V. Chandrasekar, “Estimation of light rainfall using Ku-band dual-polarization radar”, IEEE Trans. on Geoscience and Remote Sensing, vol.53(9), pp. 5197-5208, 2015.
[3] J.Testud, E.L.Bouar, E.Obligis, and M.Ali-Mehenni, “The rain profiling algorithm applied to polarimetric weather radar”, Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, vol.17, no.3, pp.332-356, 2000.