日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 気象学一般

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、Sugimoto Shiori(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:45

[AAS08-P06] 内閣府BRIDGE「積乱雲危険度予測情報の研究開発と社会実装モデルの展開」:
企業の事業継続判断に資する積乱雲危険度予測情報の開発と実証実験

*清水 慎吾1、小林 誠2、長谷川 晃一3、宮島 亜希子2、川谷 篤史4、増田 有俊5下瀬 健一1加藤 亮平1櫻井 南海子1、紀平 旭範3、柴崎 紘基4、高木 晴彦2、梁 允禎2林 春男2 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所、2.Iレジリエンス株式会社、3.中電シーティーアイ、4.東京海上レジリエンス株式会社、5.一般財団法人日本気象協会)

キーワード:雷予測、半導体工場との実証実験

内閣府の「研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)」の1課題である「積乱雲危険度予測情報の研究開発と社会実装モデルの展開」(代表機関:防災科研、代表者:清水慎吾)は、積乱雲の様々なハザード(主に雷)について、直前予測、数時間予測、半日先予測の3つの予測情報を作成・統合し、産業界からのニーズを踏まえた、企業の事業継続判断に資する、「積乱雲危険度予測情報」を開発し、その有効性を検証する実証実験を行う研究プロジェクトである(2023年10月-2025年3月)。研究開発項目は、1)予測の不確実性を考慮したハザード予測手法の開発と、2)「瞬停・瞬低」リスク予測に基づく製造工程の実情に合わせた工程管理支援情報(稼働停止や稼働率調整)の開発に大きく分けられる。ハザード予測手法の開発を防災科研と中電CTIが担当し、工程管理支援情報の開発と実証実験をIレジリエンスが担当する。また、BRIDGE後の事業化にむけたビジネスモデルの検討を日本気象協会と東京海上レジリエンスも含めた5者で実施している。産業界の様々な業種で、瞬低・瞬停への対応が実施されているが、本プロジェクトでは、ターゲット企業群として、製造業(電子部品・デバイス・電子回路製造)を選択した。「瞬停・瞬低」が、精密加工に影響を与え、不良品や精密機器の故障など損失額が実績として大きいことと、大企業から中小企業まで市場規模が大きく、事業の横展開が見込まれるためである。製造業の中でも、経済安全保障の観点から、「産業のコメ」とも呼ばれる半導体工場に焦点を当てて、実証実験を2024年暖候期に、半導体出荷額が日本トップシェア(21.6%)の九州地方で行う予定である。
 複数の半導体工場へのヒアリングを行い、無停電電源装置(UPS)によるハード対策ではコスト面からの限界もあり、高精度な予測情報に基づく工程管理による損失軽減が課題であると判明した。さらに、半導体ウエハを製造する前工程において損失が大きいため、前工程における製造工程における、稼働率調整に必要なリードタイムを調査した。
 必要なリードタイムとして、人員体制などの管理において半日程度先まで、稼働率調整のために数時間先までの予測が必要であることが判明した。12時間先予測として、気象庁のメソモデルガイダンスの発雷確率(図1左)を活用し、予測精度の検証に着手した。また、2時間先までの発雷予測として、第2期SIP線状降水帯予測(清水他, 2020年秋季大会)と同様に,九州全域を解像度1kmで2時間先までをリアルタイムで予測する。国交省XRAINの動径風と反射強度を3DVAR+IAU法で同化することで初期値改善を図り、McCaul et al., 2009 (Wea,Forecasting)が提案した落雷指数をCReSSに導入した(図1右)。検証として、フランクリン・ジャパンの落雷データを活用した。2022年7月5日の04時30分から6時(すべて日本標準時)において、熊本市内で落雷による大規模な停電が発生した事例において、4日の18時を初期値とするメソガイダンスでは熊本県の広範囲に12%以上の発雷確率が予測されているのに対し、04時を初期値としたCReSS予測では落雷位置が集中している領域に高い落雷指数を予測でき、直前予測では落雷ハザードの絞り込みが可能であることが示された。今後、予測精度の向上と工程管理支援情報の高度化を進める予定である。