日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 気象学一般

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、Sugimoto Shiori(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:45

[AAS08-P07] 線状降水帯の予測精度向上を目的とした次世代型水蒸気ライダーの開発と試験観測

★招待講演

*西橋 政秀1及川 栄治1永井 智広1、酒井 哲1、吉田 智1阿保 真2 (1.気象庁気象研究所、2.東京都立大学)

キーワード:水蒸気ライダー、DIAL、線状降水帯

線状降水帯に伴う豪雨の予測精度を向上させるには、大気下層における水蒸気濃度の鉛直分布を詳細に観測することが重要であると考えられているが、そのような観測は不足している。そのため、気象研究所と東京都立大学は、高精度・高時間分解能で連続観測でき、かつ将来の現業化も見据えた低運用コストの次世代型水蒸気ライダーを開発している。
本研究で開発している水蒸気ライダーの観測方式は、差分吸収式(Differential Absorption Lidar: DIAL)である。長期運用実績があるラマン散乱式ライダーと比較すると、装置が複雑ではあるが、低メンテナンス頻度、校正不要、半導体レーザーの使用により装置が小型・軽量化可能などの多くの利点がある。これまで、Abo et al. (2018)等により水蒸気DIALのプロトタイプが開発された。しかし、太陽背景光により日中に高高度まで観測できないことや、調整作業に長い時間と経験を要する等の課題があった。そこで、本研究ではそのプロトタイプをベースに、昼夜問わず高度3~4kmまで観測でき、かつ観測現場での作業性や運用面を向上させた装置の開発を進めている。
これまでに受信光学系の光路シミュレーションを行い、レンズの選定や配置等の検討を行うとともに、エタロンや干渉フィルターの透過率の評価などを実施した。一方、送信光学系は調整用ミラーを追加するなど再設計し、ビームプロファイラーを効果的に活用することで、アライメントに要する作業時間を大幅に(半日~1日程度を1時間未満に)短縮した。さらに送信レーザーの波長制御機構を実装した。
2023年9月末に装置を東京都立大学から気象研究所に移設し、2023年12月から断続的に試験観測を実施している。さらなる調整が必要ではあるが、DIALで観測された水蒸気濃度の鉛直分布は、同じ場所に設置されているラマン散乱式ライダーや館野のラジオゾンデ、気象庁メソ解析のデータと概ね対応する結果が得られている。
今後は出力パワーの安定性向上等に取り組む予定である。また将来的には九州にて線状降水帯をターゲットとした観測を実施する計画である。

参考文献
M. Abo, T. Sakai, P. P. L. Hoai, Y. Shibata, and C. Nagasawa: EPJ Web of Conferences 176 (2018) 04015.