15:30 〜 15:45
[AAS09-19] 東京都心における光化学オキシダント生成過程の理解のための集中観測-2023年度
キーワード:光化学オキシダント、揮発性有機化合物、反応性窒素酸化物、パーオキシアセチルナイトレート、アルデヒド類
日本における光化学オキシダント(Ox)問題として、原因物質の窒素酸化物や非メタン炭化水素の濃度は減少傾向になるにもかかわらず、Ox濃度の長期的な改善傾向や注意報の発令延日数はここ数年横ばい状態にあることが指摘されている。地上オゾン濃度の化学輸送モデル開発が試みられているが、都市部での再現・予報にはまだ課題が多く、オゾン生成に関与する化学過程の知見不足(特に窒素酸化物関係)が考えられている。我々は、環境研究総合推進費5-2106課題「光化学オキシダント生成に関わる反応性窒素酸化物の動態と化学過程の総合的解明」において、最新の計測機器を用いた東京都内での光化学オキシダント生成過程の把握に向けた集中観測を2022年度は東京郊外の東京都立大学南大沢キャンパスで行った。2023年度には、東京都心の東京都環境科学研究所の協力のもと(環境研究総合推進費5RF-2102課題との連携)、東京都環境科学研究所構内で春(5月)、夏(7月)、冬(12月)と観測を行ったので、そのデータを紹介する。
集中観測では、NO、NO2、ΣPANs (パーオキシアシルナイトレート全量), ΣONs (有機硝酸全量), HONO、HNO3、H2O2、O3、28種の非メタン炭化水素(NMHCs)、10種の含酸素揮発性有機化合物(OVOCs)を高時間分解能(1分間隔程度)で 測定を行った。ΣPANsと ΣONsは、熱分解法と組み合わせ、NO2をキャビィティ減衰位相シフト(CAPS)分光法で測定した。HONO、HNO3、H2O2は、I−·(H2O)nを試薬イオンとした負イオン化学イオン化質量分析法で、NMHCsとOVOCsは、選択イオンフローチューブ質量分析法で測定した。NMHCsのデータは、キャニスター捕集しGC/FIDで同時に測定した結果で校正している。
PANsの日変化を、2004-2005年の東京都での観測データと比較すると、午前中の早い時間帯での生成が頻繁に見られた。この場合、アセトアルデヒドも濃度が高いことが同時観測で明らかになっている。アセトアルデヒドはPANsの主成分のパーオキシアセチルナイトレートの前駆物質である。これまでには、大気汚染気塊が停滞気味である場合、上空に前日に二次生成したアルデヒド類等の大気汚染物質が残存し、これが翌日の日中に大気境界層内に取り込まれて混合し、OHラジカルを発生させ、酸化を促進する現象があることが指摘されている。近年、車の排ガスの後処理システムに酸化触媒が使われ、炭素数の少ないアルデヒド類が放出されている報告があることから、アルデヒド類の挙動が最近の光化学オゾンの傾向を決める鍵となっているのではないかと考えられる。
炭素数の少ないアルデヒド類はNMHC計での感度が低いため、NMHC計で測定されるNMHCの値にアルデヒド類の寄与はあらわには見えていない可能性がある。前駆物質のNMHCとNOxの過去20年間の減少トレンドを、都心と郊外、自排局と一般局に分けて調べたなかで、NOxの減少トレンドはどのカテゴリでも同じであったが、都心のNMHCは、9-12時の3時間平均値の減少トレンドは、指針値である6-9時の3時間平均値のものと比較して、緩やかになっていることを見出した。アルデヒド類の寄与が重要になってきているあらわれではないかと考えている。
集中観測では、NO、NO2、ΣPANs (パーオキシアシルナイトレート全量), ΣONs (有機硝酸全量), HONO、HNO3、H2O2、O3、28種の非メタン炭化水素(NMHCs)、10種の含酸素揮発性有機化合物(OVOCs)を高時間分解能(1分間隔程度)で 測定を行った。ΣPANsと ΣONsは、熱分解法と組み合わせ、NO2をキャビィティ減衰位相シフト(CAPS)分光法で測定した。HONO、HNO3、H2O2は、I−·(H2O)nを試薬イオンとした負イオン化学イオン化質量分析法で、NMHCsとOVOCsは、選択イオンフローチューブ質量分析法で測定した。NMHCsのデータは、キャニスター捕集しGC/FIDで同時に測定した結果で校正している。
PANsの日変化を、2004-2005年の東京都での観測データと比較すると、午前中の早い時間帯での生成が頻繁に見られた。この場合、アセトアルデヒドも濃度が高いことが同時観測で明らかになっている。アセトアルデヒドはPANsの主成分のパーオキシアセチルナイトレートの前駆物質である。これまでには、大気汚染気塊が停滞気味である場合、上空に前日に二次生成したアルデヒド類等の大気汚染物質が残存し、これが翌日の日中に大気境界層内に取り込まれて混合し、OHラジカルを発生させ、酸化を促進する現象があることが指摘されている。近年、車の排ガスの後処理システムに酸化触媒が使われ、炭素数の少ないアルデヒド類が放出されている報告があることから、アルデヒド類の挙動が最近の光化学オゾンの傾向を決める鍵となっているのではないかと考えられる。
炭素数の少ないアルデヒド類はNMHC計での感度が低いため、NMHC計で測定されるNMHCの値にアルデヒド類の寄与はあらわには見えていない可能性がある。前駆物質のNMHCとNOxの過去20年間の減少トレンドを、都心と郊外、自排局と一般局に分けて調べたなかで、NOxの減少トレンドはどのカテゴリでも同じであったが、都心のNMHCは、9-12時の3時間平均値の減少トレンドは、指針値である6-9時の3時間平均値のものと比較して、緩やかになっていることを見出した。アルデヒド類の寄与が重要になってきているあらわれではないかと考えている。