16:00 〜 16:15
[AAS09-21] 窒素酸化物の三酸素同位体組成を指標に用いた都市大気中の対流圏オゾン生成ポテンシャル評価

キーワード:オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、Δ17O
対流圏オゾン(O3)は、二酸化炭素、メタンに次いで三番目に大きい放射強制力を持つ温室効果ガスであると同時に光化学オキシダントとして大気の酸化力をコントロールしており、その増減は地球の気候変動、大気環境、生態系、人間の健康などに多大な影響を及ぼしており、O3がどのような大気環境下で生成しているのか定量的に把握する必要がある。
対流圏O3の起源には、成層圏O3の対流圏への流入と対流圏内で生成されるO3の2種類があり、そのうち対流圏内で生成されるO3は、主に二酸化窒素(NO2)が光解離して一酸化窒素(NO)となる過程で生成される。ただし、清浄な大気中では、NOはO3と反応してNO2となるため、正味のO3生成は起きない。一方、都市大気中では、揮発性有機化合物(VOCs)などから大気光化学反応を経て生成する過酸化ラジカル(HO2またはRO2)がNOと反応してNO2を生成することがあるため、こうして生成したNO2が光解離する場合は正味のO3生成が起きる。従って、各大気環境中のO3生成速度を定量化するには、NO2の濃度と光量(日射量)から求められるNO2の光解離速度を把握するだけでは不十分であり、大気中のNO2生成反応に占めるHO2+RO2との反応の寄与率を明らかにする必要がある。
そこで本研究は、NOx(NO2およびNO)の三種の酸素同位体(16O,17O,18O)の相対組成であるΔ17O値(=δ17O–0.52×δ18O)を指標として、大気中のNO2生成反応に占めるHO2+RO2反応の寄与率を直接定量化した。そして、NO2の光解離速度より見積もられたO3の総生成速度に上記HO2+RO2反応寄与率を掛けることにより正味のO3生成速度を見積もることを試みた。
観測は名古屋市の若宮大通公園 (都心域) と名古屋大学構内 (郊外域) の2地点で昼夜別に行った。多段フィルターパック法を用いて, 捕集溶液を含浸させた各化合物専用のフィルターを段階的に重ね, ポンプを用いてその中に大気を通過させ, 窒素酸化物 (NO, NO2, HNO3, HONOなど)の各化合物をNO2-の形で同時に捕集した。フィルターは超純水で抽出し, その後N2Oに還元し, さらにオンライン熱分解によってO2に変えて質量分析計に導入してΔ17O値を定量した。
名古屋市のNOとNO2のΔ17O値は、都心域および郊外域の両地点において0 ‰より有意に高い値を示し、O3(Δ17O=+36〜37‰) がそれぞれの生成反応に寄与していること確認された。また、NOとNO2のΔ17O値の比較から両地点においてNOがNO2へ酸化される過程でO3およびHO2+RO2の両方が寄与していることが分かった。そこでNO2生成反応に占めるHO2+RO2反応寄与率を見積もったところ、都心域で4割、郊外域でも3割程度に達することが明らかになった。本発表では、これらの結果を基にして算出したO3生成速度についても議論する。
対流圏O3の起源には、成層圏O3の対流圏への流入と対流圏内で生成されるO3の2種類があり、そのうち対流圏内で生成されるO3は、主に二酸化窒素(NO2)が光解離して一酸化窒素(NO)となる過程で生成される。ただし、清浄な大気中では、NOはO3と反応してNO2となるため、正味のO3生成は起きない。一方、都市大気中では、揮発性有機化合物(VOCs)などから大気光化学反応を経て生成する過酸化ラジカル(HO2またはRO2)がNOと反応してNO2を生成することがあるため、こうして生成したNO2が光解離する場合は正味のO3生成が起きる。従って、各大気環境中のO3生成速度を定量化するには、NO2の濃度と光量(日射量)から求められるNO2の光解離速度を把握するだけでは不十分であり、大気中のNO2生成反応に占めるHO2+RO2との反応の寄与率を明らかにする必要がある。
そこで本研究は、NOx(NO2およびNO)の三種の酸素同位体(16O,17O,18O)の相対組成であるΔ17O値(=δ17O–0.52×δ18O)を指標として、大気中のNO2生成反応に占めるHO2+RO2反応の寄与率を直接定量化した。そして、NO2の光解離速度より見積もられたO3の総生成速度に上記HO2+RO2反応寄与率を掛けることにより正味のO3生成速度を見積もることを試みた。
観測は名古屋市の若宮大通公園 (都心域) と名古屋大学構内 (郊外域) の2地点で昼夜別に行った。多段フィルターパック法を用いて, 捕集溶液を含浸させた各化合物専用のフィルターを段階的に重ね, ポンプを用いてその中に大気を通過させ, 窒素酸化物 (NO, NO2, HNO3, HONOなど)の各化合物をNO2-の形で同時に捕集した。フィルターは超純水で抽出し, その後N2Oに還元し, さらにオンライン熱分解によってO2に変えて質量分析計に導入してΔ17O値を定量した。
名古屋市のNOとNO2のΔ17O値は、都心域および郊外域の両地点において0 ‰より有意に高い値を示し、O3(Δ17O=+36〜37‰) がそれぞれの生成反応に寄与していること確認された。また、NOとNO2のΔ17O値の比較から両地点においてNOがNO2へ酸化される過程でO3およびHO2+RO2の両方が寄与していることが分かった。そこでNO2生成反応に占めるHO2+RO2反応寄与率を見積もったところ、都心域で4割、郊外域でも3割程度に達することが明らかになった。本発表では、これらの結果を基にして算出したO3生成速度についても議論する。