日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 大気化学

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、江波 進一(国立大学法人筑波大学)

17:15 〜 18:45

[AAS09-P03] 中国の領域別のメタン高度分布における放出源と大気輸送の影響

*方 志鵬1齋藤 尚子1Belikov Dmitry1 (1.千葉大学)

キーワード:GOSAT/TANSO-FTS、メタン高度分布、MIROC4-ACTM

中国は世界最大のメタン排出国の一つであり,その人為起源排出量は世界の人為起源排出量の10%以上を占めている[Peng et al., 2016]。本研究では,温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(Greenhouse Gases Observing Satellite)搭載のTANSO(Thermal And Near-infrared Sensor for carbon Observation)-FTS(Fourier Transform Spectrometer)センサの熱赤外バンド(Thermal InfraRed: TIR)のメタン高度分布観測データを用いて,中国上空のメタン高度分布とメタンカラム平均濃度(XCH4)の季節変動の特徴を明らかにするとともに,メタン高度分布における地表からの放出と大気輸送の影響を評価した。
本研究では,地形やメタン放出源の特徴を考慮して中国を複数の領域に分け,領域別にTIRデータからXCH4およびメタン部分カラム平均濃度(XpCH4)を算出した[Chandra et al., 2017]。放出源がない南シナ海では,XCH4および対流圏内のすべての層のXpCH4が夏に低くなっており,対流圏のOHラジカルとの反応による消失が反映されていた。一方,チベット高原では,XCH4およびすべての層のXpCH4が夏に高くなっており,主に湿地からのメタン放出と上空の大気輸送の両方がメタンの季節変動を支配していると考えられる。メタン高放出地帯である華北地域では,XCH4および対流圏下層と上部対流圏より上空のXpCH4が春に低く,夏・秋に高くなっており,下層での人為起源放出源からの放出と上空での大気輸送がXCH4の季節変動に影響を及ぼしていると考えられる。
さらに,TIRデータのXCH4のXpCH4と,大気化学輸送モデルMIROC4-ACTM(Model for Interdisciplinary Research on Climate, version 4.0-based Atmospheric Chemistry-Transport Model)[Patra et al., 2018]のメタン高度分布計算データ[Belikov et al., 2021; 2022]をもとに計算したXCH4およびXpCH4との比較を行った。どの領域においても,MIROC4-ACTMモデルデータとTIRデータのXCH4の季節変動は概ねよい一致を示していたが,下部対流圏については MIROC4-ACTM のメタン濃度がTIRデータより大幅に高くなっていた。