17:15 〜 18:45
[AAS10-P09] 赤道準2年振動に内在する東西非一様性について
キーワード:赤道準2年振動、QBO
QBOは地球を一周している現象で、ほとんどの先行研究ではQBOを東西一様とみなして研究されてきた。高度10hPa付近のQBO東西非一様性については、Hamilton et al.(2004)、 Sakazaki and Hamilton(2022)で示されたように、中緯度ロスビー波が赤道域に侵入してくることによりQBO東西非一様性を生むことが指摘されている。一方で高度70hPaなど、下部成層圏における東西非一様性については先行研究が少ない。近年の研究からQBOがマッデン・ジュリアン振動を変調するなど、新たな知見が得られつつあり、QBOの東西非一様性を調べる意義が増してきた。そこで本研究では1958年から2018年までの60年分のJRA-55再解析月平均データを用いて、QBO振幅の東西非一様性の経度・高度・季節・QBO位相依存性を調べた。
最初に月平均東西風のデータから、Dunkerton and Delish (1985)の手法を用いてQBO成分を各月で取り出し、時間方向の標準偏差を計算した。この場合の標準偏差は年平均した気候値QBO振幅に対応する。QBO振幅の緯度−経度分布をみると、赤道近傍で東西非一様性が存在し、その差は高度によっても変わることが分かった。高度10hPaでは先行研究(Hamilton et al. 2004; Sakaszaki and Hamilton 2022)で示されたように、西経120度周辺で振幅が弱くそれ以外で強い東西波数1型の構造が見られたが、高度70hPaから100hPaではこれとは違う経度180度で強い振幅を持ち、より大きな波数を持つ構造が見られた。次に1−12月の各月で個別に標準偏差を計算し、その経度−高度図に見られる東西方向の違いを調べたところ、上述した特徴は月によって多少の違いはあるものの、大まかな特徴は類似していることが確かめられた。
次に、東西非一様性のQBO位相依存性を調べる為に、60年分のデータから26個のQBOサイクルを取り出し、QBOコンポジット解析を行った。上述した高度10hPaや70hPaにおけるQBO振幅の東西非一様性は、QBO東風と西風位相の双方に見られ、QBO位相に依らないことが分かった。更にQBOコンポジットデータから経度方向の標準偏差を計算し、時間-高度図を調べたところ、高度70hPaではQBO東風・西風位相が最下層まで下りてきた時に値が大きかった。これはQBOが対流圏界面まで下降している構造が、東西方向に異なることを示唆している。
Dunkerton and Delish (1985)の手法では、特に下部成層圏や中高緯度ではQBO以外の成分が含まれる。そこでFFT(Fast Fourier Transform)を用いて、周期18-36カ月のバンドフィルターを東西風に施し、QBO振幅を再度計算したところ、高度10hPaで東西波数1を持つ振幅構造と、高度70hPaで経度180度に強いピークがあることが再確認された。このデータを用いて経度方向の標準偏差を計算し、緯度−高度図を調べたところ、QBO周期の変動は、極夜ジェットや亜熱帯ジェット付近にも存在し、QBOが亜熱帯ジェット上部や、極夜ジェットの南北偏差を引き起こしている可能性が示唆された。このことはQBOによる成層圏極渦変調、いわゆるHolton-Tan効果にも経度依存性があることを意味する。
最初に月平均東西風のデータから、Dunkerton and Delish (1985)の手法を用いてQBO成分を各月で取り出し、時間方向の標準偏差を計算した。この場合の標準偏差は年平均した気候値QBO振幅に対応する。QBO振幅の緯度−経度分布をみると、赤道近傍で東西非一様性が存在し、その差は高度によっても変わることが分かった。高度10hPaでは先行研究(Hamilton et al. 2004; Sakaszaki and Hamilton 2022)で示されたように、西経120度周辺で振幅が弱くそれ以外で強い東西波数1型の構造が見られたが、高度70hPaから100hPaではこれとは違う経度180度で強い振幅を持ち、より大きな波数を持つ構造が見られた。次に1−12月の各月で個別に標準偏差を計算し、その経度−高度図に見られる東西方向の違いを調べたところ、上述した特徴は月によって多少の違いはあるものの、大まかな特徴は類似していることが確かめられた。
次に、東西非一様性のQBO位相依存性を調べる為に、60年分のデータから26個のQBOサイクルを取り出し、QBOコンポジット解析を行った。上述した高度10hPaや70hPaにおけるQBO振幅の東西非一様性は、QBO東風と西風位相の双方に見られ、QBO位相に依らないことが分かった。更にQBOコンポジットデータから経度方向の標準偏差を計算し、時間-高度図を調べたところ、高度70hPaではQBO東風・西風位相が最下層まで下りてきた時に値が大きかった。これはQBOが対流圏界面まで下降している構造が、東西方向に異なることを示唆している。
Dunkerton and Delish (1985)の手法では、特に下部成層圏や中高緯度ではQBO以外の成分が含まれる。そこでFFT(Fast Fourier Transform)を用いて、周期18-36カ月のバンドフィルターを東西風に施し、QBO振幅を再度計算したところ、高度10hPaで東西波数1を持つ振幅構造と、高度70hPaで経度180度に強いピークがあることが再確認された。このデータを用いて経度方向の標準偏差を計算し、緯度−高度図を調べたところ、QBO周期の変動は、極夜ジェットや亜熱帯ジェット付近にも存在し、QBOが亜熱帯ジェット上部や、極夜ジェットの南北偏差を引き起こしている可能性が示唆された。このことはQBOによる成層圏極渦変調、いわゆるHolton-Tan効果にも経度依存性があることを意味する。

