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[ACC27-04] 南極氷床コアの最深層における再結晶と結晶方位分布への不純物の影響解明
キーワード:氷床、アイスコア、再結晶、不純物、変形、ダスト
極地氷床の挙動のなかで、最深部の数百メートルは、その構造や性質が最もよくわかっていない深度帯である。それは、アクセスが容易ではない南極大陸の内陸部であり、さらにはアイスコアサンプルの採取が非常に困難である大深部であることに起因する。しかし、極地氷床の流動を考えたとき、深部の氷の変形は氷の流動に最も寄与する深度帯である。さらに、含有不純物の存在が、再結晶の発生頻度や、結晶C軸方位分布のクラスター強度の形成に密接に関係していることが最近の研究 (Saruya ら 2024) で示された。私達は、含有不純物が結晶C軸のクラスタリングと動的再結晶化に及ぼす影響を調査するため、東南極のドーム頂部である「ドームふじ」で掘削された3035m長のアイスコアを用いた。具体的には、全深度のなかの最深部20%にあたる深度帯(深さ約2,400mから最深部約3,000mまで)のなかから、8か所の7m長の深度を選択した。そうした7メートル長のアイスコアについて、32mm x 32mm の断面をもつ角柱試料として整形し、結晶C軸のクラスター強度を約15mmの高分解能で連続的に調査した。さらに、同じ角柱サンプルを用いて、連続融解解析(Continuous Flow Analysis: CFA) を実施し、不純物濃度(特にSi, Ca, Al, Fe, Na, Mg, SO4など)を、これも約10mm程度の高分解能で分析した。そして、結晶C軸のクラスター強度とこれらの不純物の濃度の関係を調べた。主要な結果は以下のとおりである。連続解析の結果、再結晶は、深度方向にみたときに間欠的な多数のスパイクとして出現していることが観察できた。さらには、そうした「再結晶スパイク」の発生は、主としてダスト性の不純物の濃度が一定のしきい値以下になっている氷のなかで顕著に発生しており、しきい値以上の濃度をもつ氷のなかでは基本的に発生しない。特に、ダストの数濃度や、Si, Ca, Al, Feとの関係(しきい値)は明瞭に出現した。対照的に、Na, Mg, SO4との関係は一貫せず不明瞭であった。さらに、氷床の最深部10%に相当する深度ゾーンでは、それ以浅では再結晶の発生しない不純物濃度をもつ氷でもC軸のクラスター強度は弱まり、再結晶が発生していることが観察できた。本研究は、氷床氷内部での再結晶の発生頻度に関し、深度、氷の年代、不純物濃度、そして温度による影響をひもとくためのデータとなる。
References: Saruya, T., Miyamoto, A., Fujita, S., Goto-Azuma, K., Hirabayashi, M., Hori, A., Igarashi, M., Iizuka, Y., Kameda, T., Ohno, H., Shigeyama, W., and Tsutaki, S.: Development of deformational regimes and microstructures in the deep sections and overall layered structures of the Dome Fuji ice core, Antarctica, EGUsphere [preprint], https://doi.org/10.5194/egusphere-2023-3146, 2024.
References: Saruya, T., Miyamoto, A., Fujita, S., Goto-Azuma, K., Hirabayashi, M., Hori, A., Igarashi, M., Iizuka, Y., Kameda, T., Ohno, H., Shigeyama, W., and Tsutaki, S.: Development of deformational regimes and microstructures in the deep sections and overall layered structures of the Dome Fuji ice core, Antarctica, EGUsphere [preprint], https://doi.org/10.5194/egusphere-2023-3146, 2024.