日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC27] アイスコアと古環境モデリング

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:齋藤 冬樹(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、植村 立(名古屋大学 環境学研究科)、竹内 望(千葉大学)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)

17:15 〜 18:45

[ACC27-P04] グリーンランドSE2アイスコアの過去20年間の17O-excessの変動メカニズム

星屋 怜音1、*植村 立1浜本 佐彩1的場 澄人2飯塚 芳徳2 (1.名古屋大学 環境学研究科、2.北海道大学 低温研)

キーワード:17O-excess、アイスコア

水の酸素同位体δ17Oの高精度測定が可能になり、17O-excessという指標が提案された。水蒸気の17O-excessは蒸発時の動的同位体効果によって変動し、相対湿度を反映している(Barkan and Luz, RCM, 2007: Uemura et al., GRL, 2010)。したがって、降水の17O-excessからは水蒸気の起源海域の相対湿度を復元できると予想されていた。しかし、その後の降水観測に基づく研究では、水蒸気起源から空気塊が移流し、降水・降雪する過程においても17O-excessは変動することが指摘されている。これらの世界各地の降水の17O-excessの観測結果は1-2年程度の短期データであり、また北極地域のデータが不足している。そこで、本研究では長期間の気象観測データと比較が可能な17O-excessデータを取得し、その変動メカニズムの解析を行うことを目的として、グリーンランドアイスコアの分析を行った。
試料は、グリーンランド南東部の高涵養域で掘削されたSE-DomeⅡアイスコア(SE2) (Iizuka et al., BGR, 2021)を用いて約20年間分の同位体比をキャビティリングダウン式分光計で測定した。SE2アイスコアの17O-excessの気候値は1-3月に極大、6-7月に極小を示した。グリーンランド北西部のNEEMアイスコア(Landais et al., GCA, 2012)の3年間(2003-2005)の記録と比較したところ、極大極小のタイミングとその値はSE2コアと整合的であった。また、SE2アイスコアの17O-excessは、バックトラジェクトリ解析等から予測される水蒸気起源海域の相対湿度と逆相関があった。これらの結果は、SE2コアの降水の17O-excessには、水蒸気起源の相対湿度の情報が保存されていることを示している。発表では、追加測定のデータも踏まえ、17O-excessと気象インデックスとの関連についても議論する。

Barkan and Luz, Rapid Commun. Mass Spectrom. 2007; DOI: 10.1002/rcm.3180
Uemura et al., Geophys. Res. Let., 2010; doi:10.1029/2009GL041960
Iizuka et al., BGR, 2021 ; doi : 10.5331/bgr.21R01
Landais et al., GCA, 2012 ; doi:10.1016/j.gca.2011.11.022