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[ACG36-P17] モンゴル高原における2021年のAMSR2土壌水分プロダクトの評価

キーワード:土壌水分、モンゴル高原、AMSR2、地表面温度、NDVI、SGLI
1. はじめに
近年,マイクロ波放射計搭載の人工衛星による全地球土壌水分観測が進んだ.GCOM-W(JAXA),SMAP(NASA), SMOS(ESA)などの衛星観測データから全球の土壌水分データセットが公開され,研究に利用されている.そのため,土壌水分プロダクトの相互比較を行い,各プロダクトの特性把握は重要である.
そこで,本研究ではモンゴル高原を対象にGCOM-Wに搭載されたAMSR2の土壌水分プロダクトと現地観測データを比較し,地表面温度や植生指数との関係を分析することでAMSR2のプロダクトの評価を目的とする.
2. 手法・データ
本研究では2021年を対象期間とし,モンゴル高原における現地観測データおよびAMSR2観測データ,SGLIによる地表面温度,植生指数データを比較することで分析を行った.
i)地上観測データ
Fig.1に本研究の対象領域とモンゴル高原における土壌水分観測ネットワークを示す.モンゴル高原では,3カ所のAWS(自動気象観測ステーション)と10カ所のASSH(自動土壌水文ステーション)によって1または2時間毎に表層土壌水分の測定が行われている.本研究では深度3㎝のデータを用いた.
ii)AMSR2による観測データ
AMSR2は、GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計であり,主に水に関する地球物理量を推定するセンサである.本研究では,フットプリントごとに輝度温度から算出した物理量を格納した Level 2 (L2)土壌水分プロダクト(約10kmメッシュ)を使用した.
iii) SGLIによる観測データ
SGLIは,GCOM-Cに搭載された多波長光学放射計で,近紫外から熱赤外(380nm~12µm)の波長域で大気中の微粒子や植生の活性度の観測を行う光学センサである.本研究ではL2プロダクト(約250mメッシュ)を使用した.
3. 結果・考察
Fig.2に深度3㎝の地上観測値とAMSR2土壌水分観測値の関係を示す.Fig.2より,地上観測値とAMSR2土壌水分には上昇軌道,下降軌道ともに1:1の対応関係が見られる.また,上昇軌道,下降軌道ともに過小評価していることが多く,特に8月,9月は過小評価の傾向が大きい.精度に着目してみると,上昇軌道に比べ下降軌道は相関係数が大きく,RMSEが小さいことから,上昇軌道に比べ下降軌道の方が高精度といえる.
Fig.3に現地観測データとAMSR2土壌水分観測値及びSGLI(下降軌道)の地表面温度(LST),正規化植生指数(NDVI)の時間変化を示す.地上観測値は12地点の土壌水分観測ステーション(AWS,ASSH)の平均値,AMSR2土壌水分観測値は上昇軌道,下降軌道それぞれにおける対象領域内の平均値,SGLIの地表面温度(LST)及び正規化植生指数(NDVI)は対象領域内におけるcloud coverが20%以下のデータの平均値を使用した.Fig.3より,AMSR2土壌水分観測値と地上観測値の土壌水分の変動特性は類似しており,土壌水分の増加に伴う植生指数の増加が確認できる.また,地表面温度は7月にピークをとりその後減少していくのに対し,植生指数は7月以降に上昇し9月にピークをとる.植生指数の低い5月から7月は地表面温度の分散が大きく,AMSR2土壌水分観測値が現地観測値に対して0.02(m³/m³)程度過大評価であるが,8月以降の植生指数増加後は地表面温度の分散が小さく,AMSR2土壌水分観測値は0.05(m³/m³)程度過小評価であった.これより,地表面温度や植生指数の変化によってAMSR2土壌水分観測値の精度が変化することが確認できた.
Fig.4に上昇軌道におけるAMSR2土壌水分観測値と現地観測値の差と,SGLIの地表面温度及び正規化植生指数の関係を示す.Fig.4より,AMSR2土壌水分観測値と現地観測値の差と地表面温度の間に相関関係は見られないが,植生指数の間には負の相関がみられる.これより,AMSR2土壌水分観測値は地表面温度に比べ植生指数の影響を強く受け,植生指数の増加に伴い過小評価が強まることが示唆された.これは,植生が増加することによって輝度温度が上昇することが要因と考えられる.
4. まとめ
本研究では,現地観測データの比較と,SGLIの地表面温度と正規化植生指数との関係の分析を行うことでAMSR2土壌水分観測データの評価を行った.その結果.,AMSR2土壌水分観測データは上昇軌道に比べ下降軌道の方が高精度であった.また,AMSR2土壌水分観測データは植生指数の増加に伴って過小評価の傾向が強まり,これは植生の増加による輝度温度の上昇が要因と示唆された.
謝辞
本研究は,宇宙航空研究開発機構(JAXA)共同研究の支援(JX-PSPC-544613)を受けて行った.記してここに謝意を表す.
近年,マイクロ波放射計搭載の人工衛星による全地球土壌水分観測が進んだ.GCOM-W(JAXA),SMAP(NASA), SMOS(ESA)などの衛星観測データから全球の土壌水分データセットが公開され,研究に利用されている.そのため,土壌水分プロダクトの相互比較を行い,各プロダクトの特性把握は重要である.
そこで,本研究ではモンゴル高原を対象にGCOM-Wに搭載されたAMSR2の土壌水分プロダクトと現地観測データを比較し,地表面温度や植生指数との関係を分析することでAMSR2のプロダクトの評価を目的とする.
2. 手法・データ
本研究では2021年を対象期間とし,モンゴル高原における現地観測データおよびAMSR2観測データ,SGLIによる地表面温度,植生指数データを比較することで分析を行った.
i)地上観測データ
Fig.1に本研究の対象領域とモンゴル高原における土壌水分観測ネットワークを示す.モンゴル高原では,3カ所のAWS(自動気象観測ステーション)と10カ所のASSH(自動土壌水文ステーション)によって1または2時間毎に表層土壌水分の測定が行われている.本研究では深度3㎝のデータを用いた.
ii)AMSR2による観測データ
AMSR2は、GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計であり,主に水に関する地球物理量を推定するセンサである.本研究では,フットプリントごとに輝度温度から算出した物理量を格納した Level 2 (L2)土壌水分プロダクト(約10kmメッシュ)を使用した.
iii) SGLIによる観測データ
SGLIは,GCOM-Cに搭載された多波長光学放射計で,近紫外から熱赤外(380nm~12µm)の波長域で大気中の微粒子や植生の活性度の観測を行う光学センサである.本研究ではL2プロダクト(約250mメッシュ)を使用した.
3. 結果・考察
Fig.2に深度3㎝の地上観測値とAMSR2土壌水分観測値の関係を示す.Fig.2より,地上観測値とAMSR2土壌水分には上昇軌道,下降軌道ともに1:1の対応関係が見られる.また,上昇軌道,下降軌道ともに過小評価していることが多く,特に8月,9月は過小評価の傾向が大きい.精度に着目してみると,上昇軌道に比べ下降軌道は相関係数が大きく,RMSEが小さいことから,上昇軌道に比べ下降軌道の方が高精度といえる.
Fig.3に現地観測データとAMSR2土壌水分観測値及びSGLI(下降軌道)の地表面温度(LST),正規化植生指数(NDVI)の時間変化を示す.地上観測値は12地点の土壌水分観測ステーション(AWS,ASSH)の平均値,AMSR2土壌水分観測値は上昇軌道,下降軌道それぞれにおける対象領域内の平均値,SGLIの地表面温度(LST)及び正規化植生指数(NDVI)は対象領域内におけるcloud coverが20%以下のデータの平均値を使用した.Fig.3より,AMSR2土壌水分観測値と地上観測値の土壌水分の変動特性は類似しており,土壌水分の増加に伴う植生指数の増加が確認できる.また,地表面温度は7月にピークをとりその後減少していくのに対し,植生指数は7月以降に上昇し9月にピークをとる.植生指数の低い5月から7月は地表面温度の分散が大きく,AMSR2土壌水分観測値が現地観測値に対して0.02(m³/m³)程度過大評価であるが,8月以降の植生指数増加後は地表面温度の分散が小さく,AMSR2土壌水分観測値は0.05(m³/m³)程度過小評価であった.これより,地表面温度や植生指数の変化によってAMSR2土壌水分観測値の精度が変化することが確認できた.
Fig.4に上昇軌道におけるAMSR2土壌水分観測値と現地観測値の差と,SGLIの地表面温度及び正規化植生指数の関係を示す.Fig.4より,AMSR2土壌水分観測値と現地観測値の差と地表面温度の間に相関関係は見られないが,植生指数の間には負の相関がみられる.これより,AMSR2土壌水分観測値は地表面温度に比べ植生指数の影響を強く受け,植生指数の増加に伴い過小評価が強まることが示唆された.これは,植生が増加することによって輝度温度が上昇することが要因と考えられる.
4. まとめ
本研究では,現地観測データの比較と,SGLIの地表面温度と正規化植生指数との関係の分析を行うことでAMSR2土壌水分観測データの評価を行った.その結果.,AMSR2土壌水分観測データは上昇軌道に比べ下降軌道の方が高精度であった.また,AMSR2土壌水分観測データは植生指数の増加に伴って過小評価の傾向が強まり,これは植生の増加による輝度温度の上昇が要因と示唆された.
謝辞
本研究は,宇宙航空研究開発機構(JAXA)共同研究の支援(JX-PSPC-544613)を受けて行った.記してここに謝意を表す.