日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 沿岸海洋生態系-1.水循環と陸海相互作用

2024年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)、山田 誠(龍谷大学経済学部)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、座長:小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)、山田 誠(龍谷大学経済学部)、藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)

09:30 〜 09:45

[ACG39-02] 東京湾における222Rnを用いた海底湧出地下水評価

*松本 瞳1梅澤 有1中島 壽視2、石井 光廣3、吉田 剛4杉本 亮5 (1.東京農工大学、2.東京大学大気海洋研究所、3.千葉県水産総合研究センター、4.千葉県環境研究センター、5.福井県立大学)

キーワード:海底地下水湧出、ラドン、沿岸海洋、海草藻場

沿岸海域の食物網を支える一次生産量の評価や,赤潮や緑藻類の繁茂といった環境問題の要因を考えるうえで,栄養塩の起源と量を正しく評価することは重要である。海底湧出地下水は,沿岸海洋生態系への陸域物質運搬経路として,様々な影響を及ぼす。近年,集水域の地下水貯留量が増加している東京湾では,海域への地下水流入が増加している可能性があるが,研究は報告されていない。先行研究にて東京湾沿岸域の地下水に含まれる222Rn濃度が河川水より有意に高く,222Rnが地下水マーカーとして利用できることが確認された。本研究では,222Rnを用いて,東京湾での海底湧出地下水分布やその時空間の変動要因を評価することを目的とした。
 調査は5月と11月に実施し、東京湾表層水中の222Rn濃度,塩分,水温を測定した。同時に,17地点で栄養塩等の化学分析を実施した。東京湾内において、季節によって222Rn濃度分布に違いがみられた。また,外洋海水と淡水(222Rn濃度の低い河川水、もしくは222Rn濃度の高い地下水)の混合によって観測地点の水質が決まると仮定し,222Rn濃度を塩分に対してプロットしたところ,5月は河川水の寄与が大きく,11月は地下水の寄与が大きいことが示唆された。東京湾海底には泥層である沖積層が広がっており,その下部に,帯水層である砂質の下総層群が存在する。また、東京湾の堆積物表層の砂・礫分布と地下水湧出が示唆された場所が一致したことから,沖積層の割れ目などから被圧地下水の湧出が起きていると考えられた。地下水は、降水時からの流出のタイミングや塩分低下量、栄養塩構成比と濃度、懸濁物量などが河川水と大きく異なるため、沿岸の海草藻場分布や魚類相等の生態系影響が着目される。