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[ACG41-04] 西部北太平洋におけるアジア起源物質の時空間分布と海洋生物地球化学への影響評価
キーワード:大気-海洋相互作用、海洋物質循環、大気エアロゾル、海洋一次生産
西部北太平洋は、生物による二酸化炭素吸収能が世界最大級、かつ海域別漁獲量が最も高い豊かな海である。一方、当該海域は中・高緯度偏西風帯に属し、その風上には東アジアの国々が位置しているため、これらの国々から排出される、人間活動を起因とした物質による海洋の基礎生産への影響が懸念されている。西部北太平洋亜寒帯域は、High Nutrient Low Chlorophyll(HNLC)海域の一つとして、微量必須栄養塩・鉄の不足が海洋の基礎生産を規定している事が知られている(例えば、Duce et al. 1991)。当海域への鉄供給プロセスは、アジアの砂漠域を起源とするダストや人為起源エアロゾルによる大気を通じた供給と、オホーツク海を起源とする鉄に富む中層水に由来する、下層からの供給( 例えば、Nishioka et al. 2020)に大別される。しかし、それぞれが“いつ”“どれだけ”供給され、“どの程度”海洋の基礎生産に寄与しているのかが定量的に明らかにされていない。両プロセスの定量化と、その時系列変化の把握は、将来の海洋生態系予測の高度化にとって極めて重要な課題といえる。一方、西部北太平洋亜熱帯域は、主に栄養塩・窒素の供給が基礎生産を規定していることが知られているが、水平移流や鉛直混合といった海洋内部のプロセスに加え、大気を介した栄養塩沈着による基礎生産への寄与に関して、藻類の培養実験における検証や数値モデルによる推定が行われているものの、実海域による実態把握には至っていない。
そこで海洋研究開発機構 地球表層システム研究センターでは、主要・微量栄養塩の供給プロセスと供給量、さらにその時空間的変化や基礎生産に与える影響を定量化することを目的とした研究航海を2020年より実施してきた。西部北太平洋における季節別観測航海と、大気化学・海洋化学・海洋生態学・海洋物理学・海洋地質学・数値モデルなどによる複合的観点に基づく観測調査を行うことで、アジア域と海洋生態系とをつなぐプロセスの定量的な理解の促進と、西部北太平洋域を中心とした生態系のリスク評価に資する。発表では、これまでの航海で得られた成果と、2024年および2025年に計画されている北太平洋亜寒帯域における東西比較観測についても紹介する。
そこで海洋研究開発機構 地球表層システム研究センターでは、主要・微量栄養塩の供給プロセスと供給量、さらにその時空間的変化や基礎生産に与える影響を定量化することを目的とした研究航海を2020年より実施してきた。西部北太平洋における季節別観測航海と、大気化学・海洋化学・海洋生態学・海洋物理学・海洋地質学・数値モデルなどによる複合的観点に基づく観測調査を行うことで、アジア域と海洋生態系とをつなぐプロセスの定量的な理解の促進と、西部北太平洋域を中心とした生態系のリスク評価に資する。発表では、これまでの航海で得られた成果と、2024年および2025年に計画されている北太平洋亜寒帯域における東西比較観測についても紹介する。