[A-CG42] 北極域の科学

[ACG42-04] 高緯度ブロッキング現象に伴う気温変化の季節による違い

*野川 峻¹、吉森 正和²、堀 正岳² (1.東京大学理学部地球惑星環境学科、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード：北極温暖化増幅、大気ブロッキング現象

高緯度に位置する北極域では夏季と冬季の南北気温勾配の強さや大気中の水蒸気量、そして日射量が大きく異なる。異常気象をもたらす大気のブロッキング現象は、こうした背景場の違いによってその構造自体に季節的な差異が存在するとともに、ブロッキング現象自体が気象場に与える影響も大きく異なると考えられる。本研究ではこれらの要素がブロッキング周辺の熱輸送や水蒸気輸送、地表面の熱収支過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。解析には、欧州中期気象予報センターECMWFの提供する客観解析データERA5を使用し、1980-2021年についてWoollings et al . (2018)で用いられた客観的な手法により顕著なブロッキングを検出した。得られたブロッキングの中心位置に対して北極温暖化イベントに関連する種々の変数の合成図解析を実施するとともに、気温変化のプロセスを明らかにするためにベーリング海周辺を対象として地表面熱収支解析を行なった。夏季においては雲量の減少に伴う地表に到達する日射の増加を主な要因として中心付近で昇温が見られ、冬季においては水蒸気移流と温度移流による加熱により中心に対して西側で昇温が起きていることを示唆する結果が得られた。これらの解析を通じて、ブロッキングの気象場への影響を背景場の違いと結びつけて整理した結果を発表する。