日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 黒潮大蛇行

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:西川 はつみ(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 )

17:15 〜 18:45

[ACG44-P05] 黒潮大蛇行に伴う暖水塊と冷水塊が紀伊半島の降水に及ぼす影響
2011年台風12号を用いた感度実験

*森田 直樹1立花 義裕1安藤 雄太2望月 崇2 (1.三重大学 生物資源学研究科、2.九州大学 大学院理学研究院)

キーワード:黒潮大蛇行、海水面温度、豪雨、台風

黒潮の大蛇行に伴う暖水塊と冷水塊の紀伊半島付近の降水量への影響を、黒潮非蛇行時である2011年台風Talasを事例として、WRFモデルを用いた感度実験により検討した。
 その結果、暖水塊は水蒸気量を増加させるが、必ずしも降水量の増加を引き起こさず、冷水塊は水蒸気量を減少させるが、必ずしも降水量の減少を引き起こさないことがわかった。これに加えて、暖水塊と冷水塊は、気圧変化に基づく風速と風向を変化させることによって、水蒸気フラックスの収束を弱める。この気圧偏差は、気圧調整メカニズムと中心気圧の抑制の和で構成され、冷水塊による中心気圧の抑制が気圧偏差を支配する。私たちの研究では、降水量の減少は局地的には300mm以上、紀伊半島の大部分では平均80mm以上となる可能性がある。もし2011年に黒潮の蛇行が起きていれば、紀伊半島大水害のような悲劇は避けられたかもしれないし、犠牲者の数も減っていたかもしれない。
 従って、紀伊半島周辺の黒潮ルートや海面水温分布の観測強化は、気象・海洋学のみならず、災害科学の観点からも今後の防災対策に不可欠である。