日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 有人・無人航空機による気候・地球システム科学研究の推進

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:00 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

14:30 〜 14:45

[ACG45-04] 気象庁ドボラック再解析データを用いた強い台風の過去30年間の変動

*川端 康弘1嶋田 宇大1山口 宗彦1 (1.気象研究所)

キーワード:熱帯低気圧、強い台風、ドボラック法、トレンド解析、台風気候学

北西太平洋において、ハリケーンスケール・カテゴリー4以上の強い台風の長期変化傾向を把握することは、防災上の観点だけでなく、社会経済活動の面でも重要となっている。Mei and Xie(2016)は、気象庁と米軍合同台風警報センターのベストトラックデータを用いて、1977年~2014年における強い台風の数の長期変化を調査した。ここで、気象庁の風速は10分平均値である一方、米軍合同台風警報センターは1分平均値となっているため、気象庁の風速を1分値に補正している。その結果、両者のデータで強い台風の数は増えている結果を示した。しかし、使用しているデータは航空機観測主体で作成された期間(1977年~1986年)と衛星観測から台風の強度を推定するドボラック解析主体で作成された期間(1987年~2014年)をつなぎ合わせたものであり、データ接続時期の前後で品質が変化していると考えられる。また、ベストトラックデータの作成に利用される衛星観測データ数が年々増加し、ベストトラックデータの品質にも影響していることも指摘されている(Shimada et al. 2020)。そのため、強い台風の長期変化傾向について新しい知見を積み重ねるには、研究で用いるデータの均質性にも注意が必要となる。そこで、気象庁は長期にわたり一貫した方法でドボラック法による台風の強度の再解析を行い、時間的に均質なデータを作成した(Nishimura et al. 2023)。本研究ではこのドボラック再解析データを用いて、強い台風の長期変化傾向を解析した。解析の結果、強い台風の発生数は過去30年間では年々変動が大きく、有意な増加傾向は見られないことがわかった。また、強い台風の発生位置はより西側に移動していることや、最大強度に達した時の位置はより北西側に移動していることがわかった。台風の気候学的研究において、より正確に信頼度をもって台風の長期変化や温暖化の影響を評価するためには、長期間にわたる均質なデータが必要となる。そのためにも航空機観測は一つの解決策となると考えられる。

参考文献:
Kawabata, Y., U. Shimada, and M. Yamaguchi, 2023: The 30-year (1987-2016) trend of strong typhoons and genesis locations found in the Japan Meteorological Agency’s Dvorak reanalysis data. Journal of the Meteorological Society of Japan, 101, 435-443.