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[ACG46-P06] 大気メタンに対する気候−生物地球化学フィードバック:湿地メタンおよび生物起源揮発性有機化合物の発生源の影響
キーワード:メタン、地球システムモデル、大気化学
メタンの大気中での寿命は比較的短く、メタン排出を削減することにより気候変動を緩和できる可能性が期待されている。CMIP6まではメタンを含む長寿命温室効果気体の将来気候への影響は、エミュレーターから得られた濃度経路を用いた気候モデルよって予測されてきた。しかし、地球システムモデルによる排出主導型シミュレーションを用いたエミュレータでのメタン循環の評価が不十分であるため、将来のメタン濃度経路は不確実なままである。本研究では、湿地メタンと生物起源揮発性有機化合物(BVOCs)の発生源を通して、気候-生物地球化学フィードバックが大気中メタンに与える影響を評価した。そのために、MIROC-ES2L地球システムモデル(Hajima et al., 2020)とCHASER大気化学モジュール(Sudo et al., 2002)を結合したモデル(MIROC-ES2L-CHEM)を用いて、SSP1-2.6とSSP3-7.0-lowNTCFシナリオの将来予測を行った。気候-生物地球化学的フィードバックは、2050年(2100年)において、SSP1-2.6及びSSP3-7.0-lowNTCFシナリオの下でそれぞれ7%(11%)及び8%(33%)全球平均メタン濃度を増加させたが、これは自然起源のメタン発生源の増加と大気中メタン消失源の減少によるものである。気候-生物地球化学的フィードバックによるこれらのメタン増加は、SSP1-2.6及びSSP3-7.0-lowNTCFシナリオにおける2050年の放射強制力50 mW m-2に相当した。さらに、SSP3-7.0-lowNTCFシナリオでは、気候-生物地球化学フィードバックによって、メタンの放射強制力は21世紀末に180 mW m-2から370 mW m-2に倍増した。これらの結果は、エミュレータでメタン循環を十分に考慮し、地球システムモデルにより評価する必要性を示唆している。