[A-CG47] 全球海洋観測システムの現状と将来：OneArgoの実現と展望

[ACG47-02] 国連海洋科学10年SynObsによる観測インパクト実験の概要および早期の結果について

★招待講演

*木戸 晶一郎¹、藤井 陽介²、宮澤 泰正¹、石川 一郎² (1.海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門　アプリケーションラボ、2.気象庁気象研究所)

キーワード：海洋観測、データ同化、観測システム実験

様々な海洋観測プラットフォームが海洋予測にもたらす最大限の相乗効果を発揮するような効率的な海洋観測網を提案することを目的として, 現在Synergistic Observing Network for Ocean Prediction (SynObs)プロジェクトが国連の「持続可能な開発のための海洋科学の10年」の一環として進められている。SynObsプロジェクトでは、複数の海洋予測システムを用いて、さまざまな観測システム実験（OSE）および観測システムシミュレーション実験（OSSE）を共通の設定のもとで実施することで、各種海洋観測がもつインパクトをより統一的な枠組みで評価することを目指している。現在、モデル解像度やデータ同化手法の異なる、世界各国で運用されている10以上の海洋予測システムが連携して実験を実施しているほか、我々はこうしたOSE/OSSEの結果を取りまとめることで、観測インパクトの影響を評価するための基盤的なデータベースを構築するための準備を進めている。本発表では、まずSynObsで進められている観測評価インパクト(OSE)の概要、および基本的な実験設定について紹介したのち、そのガイドラインに従って実施した実験の初期的な結果を報告する。
SynObsワーキンググループでの議論に基づき、Flagship OSEではArgoフロートや船舶・係留系による水温/塩分プロファイル・衛星観測による海面水温・水位などといった、海洋予測システムに組み込む観測情報を部分的に除去した同化実験を複数行い、それらを相互比較することで、各プラットフォームがもたらすインパクトの定量的な評価を行うことが定められている。このFlagship OSEのガイドラインに沿って、準全球海況監視・予測システムJCOPE-FGOを用いて二種類の異なる水平解像度のもとで実験を進めたところ、アルゴフロートおよび衛星観測から得られた情報を同化することは、全球海洋の水温・塩分構造を正確な推定する上で必要不可欠であることが明らかになった。また、観測がもつ情報をより有効に活用するためには, モデルの水平解像度を高くすることも重要であることも判明した。講演時には、他のシステムに基づいた初期的な結果についてもあわせて紹介するとともに, 本プロジェクトが海洋観測網の運用・策定にどのような形で貢献するかについても議論したい。