日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG47] 全球海洋観測システムの現状と将来:OneArgoの実現と展望

2024年5月26日(日) 15:45 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)、座長:桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)、藤木 徹一(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)


16:15 〜 16:30

[ACG47-03] 新学術Hotspot2による黒潮再循環域での生物地球化学フロート観測

*岡 英太郎1細田 滋毅2佐藤 佳奈子2小杉 如央3小野 恒4、石井 雅男3西川 はつみ1遠山 勝也3、小橋 史明5川合 義美2須賀 利雄2,6 (1.東京大学大気海洋研究所、2.海洋研究開発機構、3.気象庁気象研究所、4.気象庁、5.東京海洋大学学術研究院、6.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:Argo、生物地球化学観測、黒潮再循環域、大気海洋相互作用

新学術領域研究「変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot」(通称Hotspot2。2019~23年度)の計画研究A02-5「ハイブリッド海洋観測:黒潮続流域の循環変動とその大気・生物地球化学への影響」では、2021年2月から2023年9月まで、黒潮・黒潮続流南方の再循環域に生物地球化学(BGC)センサー付プロファイリングフロート13台を展開し、亜熱帯モード水をメインのターゲットとして5日間隔で2年半の観測を行った。
フロートはTeletyne Webb社製のAPEX型で、Sea-Bird Scientific社製SBE-41型CTDセンサーに加え、国産(JFEアドバンテック社製)のRINKO ARO-FT溶存酸素センサーを搭載した(RINKO搭載フロートのパイロット展開は世界初)。また、13台中4台にはSea-Bird Scientific社製SeaFET pHセンサーも搭載した。RINKO ARO-FTセンサーに対しては、投入前に実験室で較正を実施するとともに、高圧化に置いてエイジングを行った。フロートは、COVID-19の流行により1年遅れたものの、2021年2月~6月に12台を投入し、2022年4月に残る1台を投入した。これまでの日本周辺におけるBGCフロート投入は、JAMSTECのS1-INBOX、ACE-INBOXプロジェクトや中国海洋大学のP-MoVEプロジェクトなど、中規模渦への集中投入を行うものが主であったが、我々は緯度経度5度四方に1個の密度で黒潮再循環域に広くフロートを展開した。これは、アルゴ計画の拡張(OneArgo)で謳われている全球BGCフロート観測網の一部をなすものであり、BGCとCore(水温・塩分)フロートの共通プラットフォームによる観測網構築を実践することができた。
投入フロート13台のうち1台は全く稼働しなかったが、残り12台は5日毎に92~256(平均181)回の観測を、1年0か月~2年4か月(平均2年0か月)にわたって行った(図1)。溶存酸素データについては、フロート投入時の船舶観測データとフロートの1回目の観測データの比較結果を基にオフセット等を補正した上で、フロートが各観測の海面浮上時に測定した空気中酸素濃度を用いて時間ドリフトを補正し、公称精度(2 μmol/kgと2%の大きい方)に近い精度を得ることに成功した。pHセンサーについては、水温・塩分・溶存酸素から経験式を用いて推定した値との比較により補正を行った。講演では、これらのデータの予備解析の結果もお伝えしたい。
図1 フロート13台の軌跡。フロートの投入点を■で、最後の観測点を★で示す。7桁の数字はフロートのWMO番号を示す。赤色はpHセンサー付フロートを表す。