日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG47] 全球海洋観測システムの現状と将来:OneArgoの実現と展望

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)


17:15 〜 18:45

[ACG47-P04] EFSOを用いた熱帯域におけるブイ観測インパクトの季節変化

★招待講演

*服部 美紀1山崎 哲1植木 巌1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:EFSO、アンサンブルデータ同化、係留ブイ

対観測アンサンブル予報感度(EFSO)とは、予報誤差に対する観測のインパクトが個々の観測のインパクトの線形的な重ね合わせであると仮定して、個々の観測の予報へのインパクトを推定する手法である。追加のOSE実験を行わずに予報へのインパクトを推定でき、予報誤差に対する全ての観測の個々の感度を一度に計算することができる。EFSOでは、EFSO値が大きいほど観測が予報をより改善させることを意味する。
係留ブイを用いた洋上気象観測は全海域で約150点展開されており、海上における貴重なin-situ観測である。エルニーニョ南方振動やインド洋ダイポールモードなどの大規模な大気海洋相互作用現象が卓越する熱帯域においては大気海洋相互作用を捉える上でも大変貴重な観測データとなる。一方で係留系観測の維持にはコストがかかることから、観測数を増やしたり、多くのブイを長期的に連続稼働させることは簡単ではない。したがって、効率的で効果的な観測網の展開が望まれており、個々の観測に対する予報感度を知ることは非常に重要である。本研究では全球大気アンサンブルデータ同化システムALEDASで計算しているEFSOを用いて、2019年の熱帯域における主に係留ブイ観測インパクトの季節変化について調べた。
インド洋におけるRAMA係留ブイ観測網に含まれる5°S 95°E, および8°S 95°Eのブイは、EFSO値が冬に大きく夏は小さい傾向があることがわかった。一方でフィリピン東海上の8°N 137°Eブイに注目すると、EFSO値は冬に小さく夏はやや大きくなる傾向がみられた。また、西部太平洋赤道域の0° 165°E, 0° 155°Eのブイは冬も夏もEFSO値が大きい傾向がみられた。インド洋東部赤道域や西部太平洋の赤道域は、冬季はMJOによる影響を強く受ける領域であり、フィリピン海や西部太平洋は夏季モンスーンの影響を受ける地域に含まれる。これらの結果から、観測点付近で卓越する現象の変化によって観測感度が変化していることが示唆された。今後、より長期間のEFSO値データを用いた解析を行い、卓越する現象とEFSO値の変化の特徴について詳しく調べていく。