日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW18] 水循環・水環境

2024年5月29日(水) 10:45 〜 11:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小槻 峻司(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、濱 侃(千葉大学大学院園芸学研究院)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)

10:45 〜 11:00

[AHW18-07] 酸性水を発生させる建設発生土の対応策と酸性水発生機構の解明の取り組み

★招待講演

*昆 周作1、品川 俊介1、鈴木 望夢1、佐藤 真1 (1.国立研究開発法人 土木研究所)

キーワード:酸性水、砒素、カドミウム、建設発生土

日本は環太平洋域の変動帯に位置するプレート収束帯に形成された島弧であり,火山活動や地殻変動の活発な地帯である.そのため,金属鉱山や鉱床地域,火山地帯が国土の至る所に分布し,これらの地質には硫化鉱物が多く分布する.硫化鉱物の中には水や空気との反応や微生物の活動によって酸化分解が起こることで酸性水が発生し、場合によっては人体に有害な元素が環境基準を超過する量で含有するものもある.この有害な元素を含む酸性水によって,生態系への影響や錆状の析出物による景観への影響,さらには深刻な環境汚染を招くことが懸念される。
有害な元素を含む酸性水は,主に鉱山開発に伴う排水や廃棄岩,尾鉱等から生じるものが著しく,古くから世界中で問題となってきた。一方、上記のような地質が至る所に分布する日本では、建設発生土においても環境汚染が認められる事例が稀に存在する。さらに、海洋堆積物に含まれる硫化鉱物の酸化分解によって酸性水が発生することが知られていることから、建設発生土についても鉱山開発と同様に環境汚染を防ぐための適切な対応が必要である.
近年、公共工事における建設発生土を資源と見なし、主に盛土材といった建材として積極的に活用する取り組みが行われている。環境汚染を生じる可能性がある建設発生土についても、適切な対策工を施したうえで用いることで、資源として活用することは可能である。そこで重要となるのが、適切な対策工の必要性とその選定である。必要以上の対策工を施すことは不必要な歳出につながり、対策工を軽んじれば環境汚染につながる。そのため、対象となる建設発生土の岩石性状や鉱物組成を理解し、有害元素の溶出と酸性水の発生機構を把握したうえで適切な対策工を選定することは必要不可欠である。
本発表では、日本における有害元素を含む酸性水を発生させる建設発生土について、従来の評価方法から対策工の選定に至るまでの対応策について紹介する。また、電子顕微鏡観察から明らかとなった有害な元素の溶出および酸性水の発生機構の事例について報告する。