14:15 〜 14:30
[AHW19-03] 湖底湧水の微量元素・水安定同位体トレーサーに基づく富士五湖への地下水寄与率の推定
★招待講演
キーワード:地下水、微量元素、水安定同位体、富士五湖
富士山は日本最大の活火山であり、その山麓には日本最大規模の湧水量(100万 m3/s)を誇る柿田川湧水群をはじめ多くの湧泉が分布している。しかしながら、山麓における湧泉の分布には地域差が見られ、そのほとんどが山体の南側に位置している。この要因として、富士山北麓では雨影効果により根本的に降水量が少ないこと、富士五湖における湧泉の情報の欠如等が指摘されている。実際、これまで富士五湖の湧泉に関するデータはほとんどなく、富士五湖に流入する地下水に関する理解は非常に限られている。そこで本研究では、富士五湖に流入する地下水の起源と流入量を明らかにするため、河口湖で湖底湧泉の調査を行い、湧水の微量元素組成・水の安定同位体比の分析を行なった。
CTD計を用いた水質調査の結果、河口湖の中央部付近で水質の鉛直分布が見られる水域があることが明らかとなった。更に当該水域でソナー及び水中ドローンによる湖底探査を行なったところ、水深約8 mの湖底で直径約10 mの湧泉群を新たに発見した。そこで、湧水の起源を明らかにするためシーページメータを用い湧水を直接採取し、水の酸素・水素安定同位体比を測定し、湖周辺の地下水と比較した。その結果、湧水は富士山の地下水ではなく、御坂山地の地下水に起源を持つことが明らかとなった。従来の研究では、湖水中のバナジウムが富士山の地下水に由来するとの仮定に基づき、湖水への地下水の寄与率は約4%程度と見積もられてきた(Koshimizu and Tomura, 2000)。一方で、河口湖の湖底湧水中のバナジウム濃度は富士山の地下水に比べて非常に低く(〜5.5 µg/L)、その寄与率は34~53%と見積もられた。これは、放射性炭素濃度に基づく地下水の寄与率(33~47%; Ota et al., 2021)や水収支式に基づく地下水寄与率(47%)と概ね一致しており、湧水の微量元素・同位体組成が、特に河川による直接流入が限定的な湖沼において、流入する地下水量を推定する上で重要なデータセットとなることが示唆された。また、水試料中の放射性炭素濃度は富士五湖地域の水収支や地下水流入を推定する上で、有効な手法となる可能性がある。
CTD計を用いた水質調査の結果、河口湖の中央部付近で水質の鉛直分布が見られる水域があることが明らかとなった。更に当該水域でソナー及び水中ドローンによる湖底探査を行なったところ、水深約8 mの湖底で直径約10 mの湧泉群を新たに発見した。そこで、湧水の起源を明らかにするためシーページメータを用い湧水を直接採取し、水の酸素・水素安定同位体比を測定し、湖周辺の地下水と比較した。その結果、湧水は富士山の地下水ではなく、御坂山地の地下水に起源を持つことが明らかとなった。従来の研究では、湖水中のバナジウムが富士山の地下水に由来するとの仮定に基づき、湖水への地下水の寄与率は約4%程度と見積もられてきた(Koshimizu and Tomura, 2000)。一方で、河口湖の湖底湧水中のバナジウム濃度は富士山の地下水に比べて非常に低く(〜5.5 µg/L)、その寄与率は34~53%と見積もられた。これは、放射性炭素濃度に基づく地下水の寄与率(33~47%; Ota et al., 2021)や水収支式に基づく地下水寄与率(47%)と概ね一致しており、湧水の微量元素・同位体組成が、特に河川による直接流入が限定的な湖沼において、流入する地下水量を推定する上で重要なデータセットとなることが示唆された。また、水試料中の放射性炭素濃度は富士五湖地域の水収支や地下水流入を推定する上で、有効な手法となる可能性がある。
