日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW22] 流域圏生態系における物質輸送と循環:源流から沿岸海域まで

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:前田 守弘(岡山大学)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、宗村 広昭(岡山大学)、Paytan Adina(University of California Santa Cruz)

17:15 〜 18:45

[AHW22-P16] LED照明によって形成された鍾乳洞内の微生物群集

*堀沢 栄1、濵田 畝那1、髙橋 歩乃1 (1.高知工科大学理工学群)

キーワード:ランペンフロラ、微生物群集、観光洞窟、アンプリコンシークエンス

龍河洞は、高知県香美市にある国指定の天然記念物で石灰岩層の中に形成された鍾乳洞である。観光客用に蛍光灯の照明が導入された。照明が当たるところに微生物などが発生し、壁面が呈色するようになった。光量を減少させる目的で照明をLEDに切り替えたが、光照射の角度が狭くなり、面積あたりの光量が増加したため、更に光に関連する微生物の繁殖を促進してしまった。洞窟内壁を保存するために着色の原因である生物の防除策を講じることとなり、光の波長を調節する試みが行われた。一方で、洞窟内壁に着色や劣化をもたらす生物は特定できていない。本研究では、龍河洞のLEDによって増殖した着色微生物の群集を調査した。さらに単離した微生物に対してUV殺菌灯の有効性を検討した。
 龍河洞内の照明によって変色した壁面や床に増殖した微生物を滅菌された綿棒で採取した。微生物の付着した綿棒の先端からDNAを抽出し、バクテリア、真菌類、植物類のDNAバーコード配列を用いてクローンライブラリー法による群集解析を行った。また綿棒の付着物を希釈平板法で培養し、培地上に出現したコロニーを単離した。さらにライトの色や着色が顕著なところに限定して、バクテリア、真菌類のメタゲノム解析を行った。その結果、青紫色の色素生産する細菌や光合成細菌、シアノバクテリアや珪藻の仲間、さまざまなコケ類などが検出された。龍河洞内の各場所から光合成生物が検出されたため、洞窟内の照明と壁面変色の因果関係が強く示唆された。微生物の単離から、一部の紫色の付着物は、色素生産する細菌が原因であることが確認できた。メタゲノム解析から、シアノバクテリアや植物、動物に共生するリゾビウムが全体の約3割から4割だった。他には、プランクトミケス門やバクテロイデス門など水や土壌に広く分布する細菌が多く検出された。コケについては観光路に沿って多様な種が検出され、貧栄養な環境に生育する種が多いことが明らかとなった。