17:15 〜 18:45
[AOS11-P06] 低重力環境における淡水養殖システムの構築:火星での人類生存を支える基盤
キーワード:火星、人工重力、淡水養殖、閉鎖環境循環システム、低重力環境、コアバイオーム複合体
宇宙空間で継続的な魚類養殖を行うことは、地球外での生命維持システムを構築する上で重要な課題である。これは長期滞在における持続的な食料供給システムとなりうるという点、水耕栽培やその他の植物栽培と組み合わせることで閉鎖型の生態系を構築し、資源の再利用と循環を促進するのに役立つという点、そして生きた魚類を育てることが地球外という閉鎖空間におけるストレスや孤独感を軽減することができる自然とのつながりを自覚させる心理的ウェルビーイングに寄与する可能性があるためである。今回我々は、「他の惑星環境での海洋実現の可能性」について、火星に持続的に長期滞在をすることを前提に、その環境下における淡水の水産養殖システムの構築とその重要性と実現可能性について論じたい。
火星のような地球外の惑星で人類が持続的に長期滞在することを実践するためにまず課題となるのが、低重力環境である。低重力環境は、筋肉萎縮、骨密度の低下、心血管系の非適応、視力や中枢神経系への影響など、多くの健康上の課題を引き起こすことが知られている。そのため、火星において人類が長期生活するためには、地球の重力を模倣する人工重力を生じさせる設備が必須となる。その設備として人類が居住する逆円錐状の施設全体を回転させる方法が人口重力を生み出す設備として有望視されている。人間150人程度が居住できる規模の設備を想定すると、高さ約140m程度の大きさが必要となる。回転により生み出される人工重力は火星の重力と回転による遠心力の合力によるものであり、中心軸からの距離により生み出される重力が異なる。その頂点付近ではほとんど遠心力による重力の加算は得られず、火星の重力そのものに近い約1/3G環境になると考えられる。幸い少なくとも1/6G(月の重力)での研究では、マウスの骨格筋の萎縮を防ぐのに十分であることが示されており、養殖を目的とした魚類の飼育にはこの低重力環境を用いることは可能であると考えられる。その低重力環境のために人類の居住スペースとしては適さないが、空間に海水ではなく淡水の水産養殖システムを設置することを提案したい。
淡水は生命維持の基盤、陸生植物の成長と生存、限られた空間においては淡水魚類養殖の方が簡便、という点で海水環境より優先するべきであると考える。淡水は飲料水として人類に利用されるだけでなく、食料生産(農業や畜産)、衛生(洗浄や排泄物処理)、産業活動など生命維持において直接利用できる点で不可欠である。また光合成によって酸素を生産し、二酸化炭素を吸収することで地球の気候系を調節する陸生植物や閉鎖環境内の生物多様性の維持・成長・生存にも必須である。そして、淡水魚種は草食性および雑食性の種が多く、肉食性魚種の多い海水魚種と比較して飼料コストや維持・メンテナンス面において導入が簡易である。このように、水産養殖システムを用いることの利点については、特に閉鎖環境循環システム(Closed-Loop Life Support Systems, CLSS)において重要な役割を果たす。一方で淡水の養殖システム構築に関する課題として、水質保全が挙げられる。人間が居住するのと同じ施設内に養殖システムを設置し、その養殖される生物を人間が安全に食するためには、養殖システムの温度の維持、溶存酸素やpHの調整、アンモニアの処理など技術的な革新も必要となってくる。
淡水の養殖システムを構築することは閉鎖環境循環システムの維持や、食料供給システムの構築、精神的なウェルビーイングの維持に非常に重要である。火星における人類の長期生活の実現可能性を高めるためには、人工重力の下での淡水養殖システムの確立が不可欠であり、これが「コアバイオーム複合体」の核心となる。他の惑星環境での海洋実現の探求は、地球外生命維持システムの構築における新たな地平を開く可能性を秘めている。
火星のような地球外の惑星で人類が持続的に長期滞在することを実践するためにまず課題となるのが、低重力環境である。低重力環境は、筋肉萎縮、骨密度の低下、心血管系の非適応、視力や中枢神経系への影響など、多くの健康上の課題を引き起こすことが知られている。そのため、火星において人類が長期生活するためには、地球の重力を模倣する人工重力を生じさせる設備が必須となる。その設備として人類が居住する逆円錐状の施設全体を回転させる方法が人口重力を生み出す設備として有望視されている。人間150人程度が居住できる規模の設備を想定すると、高さ約140m程度の大きさが必要となる。回転により生み出される人工重力は火星の重力と回転による遠心力の合力によるものであり、中心軸からの距離により生み出される重力が異なる。その頂点付近ではほとんど遠心力による重力の加算は得られず、火星の重力そのものに近い約1/3G環境になると考えられる。幸い少なくとも1/6G(月の重力)での研究では、マウスの骨格筋の萎縮を防ぐのに十分であることが示されており、養殖を目的とした魚類の飼育にはこの低重力環境を用いることは可能であると考えられる。その低重力環境のために人類の居住スペースとしては適さないが、空間に海水ではなく淡水の水産養殖システムを設置することを提案したい。
淡水は生命維持の基盤、陸生植物の成長と生存、限られた空間においては淡水魚類養殖の方が簡便、という点で海水環境より優先するべきであると考える。淡水は飲料水として人類に利用されるだけでなく、食料生産(農業や畜産)、衛生(洗浄や排泄物処理)、産業活動など生命維持において直接利用できる点で不可欠である。また光合成によって酸素を生産し、二酸化炭素を吸収することで地球の気候系を調節する陸生植物や閉鎖環境内の生物多様性の維持・成長・生存にも必須である。そして、淡水魚種は草食性および雑食性の種が多く、肉食性魚種の多い海水魚種と比較して飼料コストや維持・メンテナンス面において導入が簡易である。このように、水産養殖システムを用いることの利点については、特に閉鎖環境循環システム(Closed-Loop Life Support Systems, CLSS)において重要な役割を果たす。一方で淡水の養殖システム構築に関する課題として、水質保全が挙げられる。人間が居住するのと同じ施設内に養殖システムを設置し、その養殖される生物を人間が安全に食するためには、養殖システムの温度の維持、溶存酸素やpHの調整、アンモニアの処理など技術的な革新も必要となってくる。
淡水の養殖システムを構築することは閉鎖環境循環システムの維持や、食料供給システムの構築、精神的なウェルビーイングの維持に非常に重要である。火星における人類の長期生活の実現可能性を高めるためには、人工重力の下での淡水養殖システムの確立が不可欠であり、これが「コアバイオーム複合体」の核心となる。他の惑星環境での海洋実現の探求は、地球外生命維持システムの構築における新たな地平を開く可能性を秘めている。