日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS16] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:増永 英治(Ibaraki University)、日髙 弥子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、高橋 杏(東京大学 大気海洋研究所)、中島 壽視(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[AOS16-P08] 東シナ海陸棚斜面域を例としたマルチビーム測深機を用いた内部波の3次元音響イメージング

*長澤 亮佑1堀之内 龍一1 (1.海上保安庁)

キーワード:音響測深機、内部波、密度躍層、水中音響学、音響海洋学

測深機を用いた海洋物理構造の音響イメージングは,長らく単一の音響ビームにより海中を捉えるシングルビーム測深機を用いて行われてきた(Proni and Apel, 1975など).近年ではマルチビーム測深機(MBES; multibeam echosounder)の普及に伴い,内部波や海洋微細構造の観測においてもこれを活用した事例が見られるようになっている(Colbo et al., 2014,Zwolak et al., 2021).MBESは,短い音響パルスの発振と高い指向性をもつ複数の受波ビームの形成により,海洋中の3次元音響イメージを高分解能かつ高い観測点密度で取得できるより容易な手段である.本報告では,MBESを用いた内部波の3次元音響イメージング手法についての考察を目的とし,東シナ海陸棚斜面域で2022年10月に観測された内部重力波(堀之内ほか,本発表会,2024)を例にデータ解析手法を詳報する.
当該観測は,発振周波数70 – 100 kHzのMBESを用いて,陸棚斜面を横切る向きの連続往復航走により行われたものである.著者による既報(長澤・堀之内,2023)の手法を適用して描いた水深約600 mまでの鉛直2次元のエコーグラムには,水平十数kmの範囲に渡って,内部孤立波様の波打ちを伴う音響散乱層が認められた.さらに,測線上で取得された水温及び電気伝導度の鉛直プロファイルから特性音響インピーダンスを推定したところ,その鉛直変化率の分布は音響散乱層とよい対応を示した.これにより,内部波を特徴づける密度躍層の鉛直振動の様子が時空間的な連続性をもって可視化された.さらに,移動観測データから内部波の波長その他の特徴量を推定するにあたり必要な考察として,観測プラットフォームの位置変化と音響ビームの空間的配置を考慮した解析について検討し,内部波の3次元的な描出を試行した.