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[BBG01-P03] 海底下環境における珪藻化石に付着する微生物の特性と優位性

キーワード:海底下、微生物、珪藻、グアイマス、南大洋、IODP
海洋生態系に生きる珪藻は、珪酸質の2枚の被殻に覆われた単細胞性の藻類である。全球バイオマス下で珪藻の存在量は 444-582 Tg – Cと推察され、海洋の原生生物の約 1/3を占める主要な一次生産者である。海洋における珪藻の役割として、CO2吸収や炭素循環、生物ポンプが挙げられる。近年、海洋の水柱に生息している珪藻に特異的に付着する微生物がマリンスノーの形成を促進させ、生物学的ポンプの効率を高める可能性が示唆された。この生きた珪藻に付着する微生物は、その群集組成や相互作用など、様々な研究成果が挙げられている。一方で、マリンスノーとして沈降した珪藻化石は、過去の地球環境変動を調べるための研究対象として重要であるが、海底下に生息する微生物と沈降した珪藻化石との関係についてはほとんど明らかになっていない。
2019 年に行われた国際深海科学掘削計画第 385 次掘削調査(グアイマス海盆)によって採取された堆積物試料から、珪藻殻の表面に、周囲の堆積物より多数の微生物が付着していることが観察された。極限的に栄養が不足する海底下において、珪藻化石に密度高く微生物が付着する現象は、海底下環境での生存に優位に働いていると考えた。そこで、本研究では珪藻化石に付着した微生物に着目し、付着細胞数や群集組成の解析を実施した。
試料は、IODP Exp.385掘削コアから分取したグアイマス海盆の堆積物と白鳳丸KH-19-6次航海の南大洋大西洋区(ウェッデル海)、白鳳丸KH-20-1航海の南大洋インド洋区から採取した堆積物を用いた。これらの堆積物については、蛍光顕微鏡で微生物細胞の計測、走査電子顕微鏡観察、微生物群集解析を行った。堆積物中の微生物と珪藻化石に付着している微生物の細胞数を比較したところ、堆積物全体の微生物の内、10%前後の微生物が珪藻化石に付着していることが観察された。また、走査電子顕微鏡観察では、微生物が糸状の繊維を出して珪藻に付着している様子が観察された。さらに微生物群集解析の結果では、水柱で付着が確認されているAlphaproteobacteria以外にPlanctomycetes、Acidimicrobiiaなどが多く珪藻化石に付着していた。堆積物全体との比較では、主要な微生物群集に違いがあることが明らかとなった。これらの結果から、珪藻化石の表面は特定の微生物をホストするニッチとして働いている可能性が示唆された。
本発表では、堆積物中の微生物と珪藻化石に付着した微生物群集の違いと付着の優位性に関して、採取地点における海洋学的な観点と微生物的な観点から考察・展望について議論する。
2019 年に行われた国際深海科学掘削計画第 385 次掘削調査(グアイマス海盆)によって採取された堆積物試料から、珪藻殻の表面に、周囲の堆積物より多数の微生物が付着していることが観察された。極限的に栄養が不足する海底下において、珪藻化石に密度高く微生物が付着する現象は、海底下環境での生存に優位に働いていると考えた。そこで、本研究では珪藻化石に付着した微生物に着目し、付着細胞数や群集組成の解析を実施した。
試料は、IODP Exp.385掘削コアから分取したグアイマス海盆の堆積物と白鳳丸KH-19-6次航海の南大洋大西洋区(ウェッデル海)、白鳳丸KH-20-1航海の南大洋インド洋区から採取した堆積物を用いた。これらの堆積物については、蛍光顕微鏡で微生物細胞の計測、走査電子顕微鏡観察、微生物群集解析を行った。堆積物中の微生物と珪藻化石に付着している微生物の細胞数を比較したところ、堆積物全体の微生物の内、10%前後の微生物が珪藻化石に付着していることが観察された。また、走査電子顕微鏡観察では、微生物が糸状の繊維を出して珪藻に付着している様子が観察された。さらに微生物群集解析の結果では、水柱で付着が確認されているAlphaproteobacteria以外にPlanctomycetes、Acidimicrobiiaなどが多く珪藻化石に付着していた。堆積物全体との比較では、主要な微生物群集に違いがあることが明らかとなった。これらの結果から、珪藻化石の表面は特定の微生物をホストするニッチとして働いている可能性が示唆された。
本発表では、堆積物中の微生物と珪藻化石に付着した微生物群集の違いと付着の優位性に関して、採取地点における海洋学的な観点と微生物的な観点から考察・展望について議論する。