[B-CG07] 岩石生命相互作用とその応用

[BCG07-02] 陸生温泉の微生物ストリーマーにおける希少微生物叢の発見

*西原 亜理沙¹、飯野 隆夫¹、河合 繁²、塚本 雄也¹、平岡 聡史³、延 優⁴、大熊 盛也¹ (1.国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター 、2.豊橋技術科学大学大学院工学研究科、3.国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋機能利用部門、4.国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 )

キーワード：陸生温泉、ストリーマー、微生物群集、Deferribacteraceae

高温の陸生温泉では、ストリーマーと言われる白色の高密度バイオフィルムがしばしば発達しており、世界的に研究が進められているが、形成や維持機構は未だ明らかになっていない。本研究では、フィールド調査を通して、ストリーマー形成が見られる中性の硫黄泉を新たに発見した。そこで、従来のストリーマーとの相違点およびストリーマーの微生物生態系における未知微生物の役割を明らかにするため、温泉の化学成分や菌叢構造を調べた。また、培養実験による未培養細菌株取得を試みた。
ストリーマーの発達が確認された青森県の陸生温泉にて、源泉（57.6 ºC）の化学成分組成を調べたところ、中性の硫黄泉に分類される成分に加え、塩分濃度が高いことがわかった。次に菌叢構造を明らかにするため、源泉付近に繁茂するストリーマーからDNA抽出を実施し、16S rRNAのV4領域に対するアンプリコン解析を行った。その結果、相対量97.74-98.25%に相当する大部分の微生物が未培養系統群に由来することがわかった。また、微生物の相対量が0.05%以上あるAmplicon sequence variant (ASV)は21±4.5個に限られており、極めて少数の系統群で構成された単純な生態系を成していることがわかった。菌叢からはNitratiruptor属細菌、Hydrogenophilus属細菌、及びDeferribacteraceae (科)の未培養系統群の細菌が半数以上を占めることがわかり、従来の陸生の中性温泉のストリーマーと異なる菌叢構造をしていることが明らかとなった。さらに、採取したサンプルに対する培養実験を実施したところ、Petrothermobacter organivorans ANA株（Deferribacteraceae）と16S rRNAが94.0%の相同性（1394bp) を示す菌株を取得することができた。
本研究で新たに解析したストリーマーは、未培養株を多く含んでいる。それらの生理機能を従来のストリーマーの情報と比較し、両者の相違点を明らかにすることで、ストリーマーの維持形成機構や不明点の多い未培養微生物の代謝・生態的役割の理解が進むことが今後期待される。