17:15 〜 18:45
[BCG07-P04] 塩溶液中におけるフェリハイドライトから結晶性鉄酸化物への変質挙動:太古火星の水質への示唆

キーワード:フェリハイドライト、ヘマタイト、ゲーサイト、火星
ゲールクレーターの堆積物の分析から、太古火星での水―岩石反応で得られる鉄酸化物の存在が認められている。水中の溶存Fe3+の加水分解で形成される一般的な結晶性に乏しい鉄酸化物としてフェリハイドライトがあり、それを前駆体とした結晶性の最終生成物がヘマタイトとゲーサイトである。フェリハイドライトからヘマタイトとゲーサイトへの転移は水質条件によって主に制御されており、pHが中性のときにヘマタイトが優勢となり、酸性もしくはアルカリ性ではゲーサイトが優勢である(Schwertmann and Murad, 1983)。Fukushi et al. (2022)では、ゲールクレーターでの最後の湿潤イベントにおける水のpHを3-5と推定している。このpH条件ではゲーサイトが優勢であるはずだが、ゲールクレーターの堆積物から鉄酸化物としてゲーサイトは同定されていない。また、pHが中性で塩濃度(イオン強度)が高い水中ではヘマタイト形成が優勢になることが報告されている(Torrent and Guzman, 1982)。したがって、火星に存在する堆積物中に、ヘマタイトと競争的に形成されるはずのゲーサイトが認められていないのは、水のイオン強度が高かったためだと仮説が立てられる。しかし、pHとイオン強度を共に制御した条件におけるフェリハイドライトの変質は研究されていないので、変質挙動を系統的に理解する必要がある。本研究では、NaCl溶液とMgCl2溶液のpHとイオン強度を共に制御して、フェリハイドライトの転移を粉末X線回折とX線吸収分光法によって調べた。
ヘマタイトは、pHが中性付近でイオン強度によらず優勢であった。酸性条件では、イオン強度が低いとゲーサイトが優勢であったが、イオン強度の増加とともにヘマタイトの割合が増加し、高いイオン強度でヘマタイトのみ形成された。
ヘマタイトはフェリハイドライト粒子の凝集-脱水-再配列プロセスの組み合わせによって形成され、ゲーサイトはフェリハイドライト粒子の溶解と再結晶化によって形成される(Cornell and Schwertmann, 2003)。したがって、イオン強度の増加によってフェリハイドライト粒子に凝集効果が働き、ヘマタイトの形成が促進されたと考えられるが、塩溶液中におけるフェリハイドライトの変質挙動と凝集挙動を共にモニターした研究はされていない。本研究ではpHとイオン強度を共に制御した条件におけるフェリハイドライトの凝集と溶解挙動にも着目し、塩溶液中におけるフェリハイドライトの転移メカニズムの理解も試みた。
ヘマタイトは、pHが中性付近でイオン強度によらず優勢であった。酸性条件では、イオン強度が低いとゲーサイトが優勢であったが、イオン強度の増加とともにヘマタイトの割合が増加し、高いイオン強度でヘマタイトのみ形成された。
ヘマタイトはフェリハイドライト粒子の凝集-脱水-再配列プロセスの組み合わせによって形成され、ゲーサイトはフェリハイドライト粒子の溶解と再結晶化によって形成される(Cornell and Schwertmann, 2003)。したがって、イオン強度の増加によってフェリハイドライト粒子に凝集効果が働き、ヘマタイトの形成が促進されたと考えられるが、塩溶液中におけるフェリハイドライトの変質挙動と凝集挙動を共にモニターした研究はされていない。本研究ではpHとイオン強度を共に制御した条件におけるフェリハイドライトの凝集と溶解挙動にも着目し、塩溶液中におけるフェリハイドライトの転移メカニズムの理解も試みた。
