10:00 〜 10:15
[BPT03-05] クレード内の多様性変動パターンと大量絶滅時のクレードの絶滅率には関係があるか?―生態系シミュレーションによる解析―
キーワード:大量絶滅、生態系シミュレーション、クレード、多様性変動
白亜紀末の大量絶滅で絶滅したクレードには大量絶滅のはるか前からクレード内の多様性が減少傾向を示すものが多く知られている。これはかつて隕石衝突説への反論の根拠の一つとされていた。クレード内の多様性変動パターンと大量絶滅との関係について、これまでは化石記録を解析することで進められてきたが明確な結論は得られていない。その最も主要な原因の一つは、そもそもクレード内の多様性変動パターンを確定できないことである。例えば恐竜についてはSloan et al. (1986)とSheehan et al.(1991)以来、多様性が減少傾向にあるか否かが長く議論されてきた。近年は、多様性が減少して見えるのは化石記録の不完全性によるものであるとの報告が多くなされており(Signor & Lipps, 1982, Paul, 2005, Schultz et al. 2010)、またWang & Dodson (2006)による統計的な解析の結果もそれを指示する。しかし、Ballet et al. (2009)とSakamoto et al. (2016)による統計的な解析の結果は恐竜類の多様性が減少傾向にあることを示しており、未だにはっきりとした結論は得られていない。そこで本研究では、改造したYoshida (2008)の生態系進化モデルを用いたコンピュータシミュレーションによってこの問題に挑戦した。コンピュータの中ならば、全てのクレード、全ての種のデータが記録されるので、クレード内の多様性変動パターンと大量絶滅時のクレードの絶滅率を明確に解析できるからである。
十分に長時間進化させた後、外部からのエネルギー流入を一定期間85%減少させて植物による一次生産を減少させると、約60%の動物種が絶滅し、約60%の動物のクレードが絶滅した。体サイズの大きな種が絶滅しやすいこと、腐肉食を行う肉食動物、雑食動物が生き残りやすいこと、種多様性の低いクレードが絶滅しやすいという結果が得られた。これらの結果はこれまでの化石記録の解析からの報告と整合的である。シミュレーションの結果を解析したところ、クレード内の種多様性変動の長期的な傾向は大量絶滅時の絶滅確率とはほぼ関係が無かった。短期的な傾向について解析した結果、クレード内の多様性が減少した結果、極端に多様性が低くなったクレードは絶滅する確率が高かった。しかし、一定程度以上の多様性を保持していたクレード同士で比較すると短期的な多様性の傾向も絶滅確率とはほぼ関係なかった。しかし、クレード内の多様性変動パターンと絶滅率は全くの無関係ではない。生きた化石のように低い多様性を保ったまま長期間生き延びているクレードは比較的絶滅率が低かった。また、クレード内の多様性変動パターンをspindle diagramで表した時の重心の位置について解析した結果、重心の位置が大量絶滅の時期から離れているほど大量絶滅時の絶滅率が高いことが明らかとなった。
十分に長時間進化させた後、外部からのエネルギー流入を一定期間85%減少させて植物による一次生産を減少させると、約60%の動物種が絶滅し、約60%の動物のクレードが絶滅した。体サイズの大きな種が絶滅しやすいこと、腐肉食を行う肉食動物、雑食動物が生き残りやすいこと、種多様性の低いクレードが絶滅しやすいという結果が得られた。これらの結果はこれまでの化石記録の解析からの報告と整合的である。シミュレーションの結果を解析したところ、クレード内の種多様性変動の長期的な傾向は大量絶滅時の絶滅確率とはほぼ関係が無かった。短期的な傾向について解析した結果、クレード内の多様性が減少した結果、極端に多様性が低くなったクレードは絶滅する確率が高かった。しかし、一定程度以上の多様性を保持していたクレード同士で比較すると短期的な多様性の傾向も絶滅確率とはほぼ関係なかった。しかし、クレード内の多様性変動パターンと絶滅率は全くの無関係ではない。生きた化石のように低い多様性を保ったまま長期間生き延びているクレードは比較的絶滅率が低かった。また、クレード内の多様性変動パターンをspindle diagramで表した時の重心の位置について解析した結果、重心の位置が大量絶滅の時期から離れているほど大量絶滅時の絶滅率が高いことが明らかとなった。