日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 総合的防災教育

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:林 信太郎小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)、山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)、山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、林 信太郎

09:15 〜 09:30

[G01-02] 火山防災教育におけるプログラミング教材の開発と実践
-火山観測機器の理解を目指したSTEAM教育による教育的効果の検討-

★招待講演

*佐藤 真太郎1 (1.京都ノートルダム女子大学)

キーワード:プログラミング教育、火山観測機器、防災教育、STEAM教育、理科教育

2014年9月27日,気象庁が噴火警戒レベル1としていた御嶽山が噴火し,犠牲者57名,行方不明者6名,重軽傷者69名の被害を生んだ。噴火予知は未だ難しく,噴火警戒レベル等の情報は不確実性が高い。そのため,災害からの被害を減らすためには,住民及び登山者等が,取るべき防災行動の指標である噴火警戒レベル等について正しい認識したり,自ら情報を読み取ったりすることが求められる。そのためには,情報の根拠となる火山観測システムについても知る必要がある。
これらの知識の獲得は,学校教育においても重要な役割を担う。
学校教育においては,火山噴火に関わる自然現象の知識に加え,火山観測システムの理解や,得られた数値データの読み取りなど,文理融合的・総合的な視点から,火山に関わる教育内容を構築する必要がある。特に,中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編で,噴火警戒レベルを取り上げ,火山活動の状況から,人命に危険を及ぼす火山現象などを理解させる内容が新たに加わったことから,学習内容の接続を考慮し,小学校第6学年での取組が期待できる。
このような背景から,本研究では,伊豆諸島北部に位置する伊豆大島の第6学年児童を対象に,火山観測機器への理解に関連したプログラミング教育で育む資質・能力育成をねらいとしたSTEAM教育プログラムを開発し,実践した。そして,ポップコーンの噴出で火山噴火を表現した火山噴火モデル上に火山観測機器に見立てたMESHブロック(ソニーマーケティング株式会社製,以下同製品)を設置し,噴出前の震動や温度の変化,ポップコーンの噴出を感知するプログラミング教育を行った。MESHブロックには,動きブロック,人感ブロック,温度・湿度ブロック,ボタンブロック,LEDブロック等がある。動きブロックは,地震計として,温度・湿度ブロックは,熱観測に近いものとして考えることができる。人感ブロックについては,システムは熱観測と近いが,人感ブロックには,カメラが付いており,噴出したポップコーンを感知できるという点から遠望カメラと近い役割を担えると考えた。さらに,プログラミング教育で育む資質・能力を踏まえた授業目標を設定し,その教育的効果を検討した。
その結果,火山防災教育におけるプログラミング教育によって,児童が,火山噴火現象と,その現象を踏まえた火山観測機器に気付くことができること,火山噴火の被害を減らすようなプログラミングを考えることができること,火山観測機器を設置することによって,火山噴火からの被害を減らそうとしていることが理解できた。
具体的には,児童が,揺れを感知したり,温度の変化を感知したりするMESHで出来ることと火山観測機器の観測方法を照らし合わせる過程で,火山性の地震が発生したり,噴煙が上がったり,噴石が跳んできたりするなどの火山噴火の特徴についての知識と火山観測方法を結び付けて考えようとする場面が導出できることがわかった。さらに,プログラミングを行う過程でも,地下のマグマの動きなど,火山噴火に関連した知識を活用しながら,情報を正確に伝える手立てを検討するなど,思考・判断・表現する場面が導出されることも理解できた。これらの活動について,児童は,火山噴火モデルを揺らして火山性地震を再現するなどしながら,何度も繰り返し実施していた。また,LEDやボタンなど,振動や温度を感知するMESHを用いた火山観測機器からの情報を受信する機能を持つMESHブロックの設置場面を検討する場面で,災害からの被害を減らすための方法を考えようとする場面が導出されることも示された。