09:30 〜 09:45
[G01-03] 3DCGを利用した立体ハザードマップの作成とその評価
キーワード:ハザードマップ、3DCG、浸水予想
1.はじめに
近年、日本列島では風水害が大規模に発生し続けている。豪雨災害による被害が増加する中、各地域で水害ハザードマップの整備が進んでいる。特に平成30年7月豪雨の被害地域は、ハザードマップの危険地域と重なっており、ハザードマップを正しく理解することが災害による被害を最小限に抑えることにつながる。しかし、防災ジオラマ推進ネットワークが2019年1月に行った調査(調査人数1772人)によれば、「ハザードマップ で周辺の災害リスクを理解している」と答えた人は17.7%に留まっている。また、ハザードマップ を見たことがある人のうち、「どの程度のリスクがあるのか、わかりにくい」と答えている人は22.2%であり、浸水範囲の理解は容易でないことがわかる。
水害に関しては地形の影響が大きく、ハザードマップ作成の重要なデータとなっている。しかし、普段生活している地域であっても大地形の把握は難しい。また、国土地理院が発行している地形図には建物などが記載されており、特に都市部では等高線の判読が困難な場合がある。
そこで、本研究では、水害ハザードマップへの理解を促すため、地形の特徴を直感的に理解しやすい3DCG教材の開発を行い、その効果を検証することを目的とした。
2.教材作成
作成した教材はweb上での閲覧が可能である。教材の作成では、地形の3DCGデータを地理院地図ウェブサイトから入手した。その後、Blenderを使用し、矢印や文字の3DCGを追加した。作成したファイルはweb上のプラットフォームであるSketchfabへアップロードし、USDZ形式に変換した。変換したファイルをiPadへとダウンロードした。iPadでは、作成した教材のAR表示と通常の表示が可能である。
3.授業実践および評価
首都圏の男子中学2年生240名を対象とし、本教材を使用した授業実践を行なった。授業実践においては、渋谷地区と駒場地区を対象とし、それぞれの地域の平面地形図、3DCG立体地形図、3DCG立体ハザードマップを用いて、浸水域の予想を行なった。教材による効果と、渋谷地区と駒場地区の難易度の差による効果を分離するため、渋谷地区を先に学習してから駒場地区を学習するA群と、駒場地区を先に学習してから渋谷地区を学習するB群を設定した。
作成した教材の評価は、授業中に行った浸水域の予想結果(理解度調査)と、授業後に行った生徒の意識調査をもとに行った。理解度調査の結果から、全体的な傾向として、台地と谷沿いの浸水地点は、平面地形図に比べて3DCG立体地形図で正答率が高くなる傾向が見られた。一方で、台地上の窪地に関しては、平面地形図よりも3DCG立体地形図で正答率が低くなる傾向が見られた。
・3DCG教材の作成方法に関しては、以下のwebページにまとめた。
https://sites.google.com/site/jouetsuargroups/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97/07%E7%AB%8B%E4%BD%93%E3%83%8F%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97
・本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。
近年、日本列島では風水害が大規模に発生し続けている。豪雨災害による被害が増加する中、各地域で水害ハザードマップの整備が進んでいる。特に平成30年7月豪雨の被害地域は、ハザードマップの危険地域と重なっており、ハザードマップを正しく理解することが災害による被害を最小限に抑えることにつながる。しかし、防災ジオラマ推進ネットワークが2019年1月に行った調査(調査人数1772人)によれば、「ハザードマップ で周辺の災害リスクを理解している」と答えた人は17.7%に留まっている。また、ハザードマップ を見たことがある人のうち、「どの程度のリスクがあるのか、わかりにくい」と答えている人は22.2%であり、浸水範囲の理解は容易でないことがわかる。
水害に関しては地形の影響が大きく、ハザードマップ作成の重要なデータとなっている。しかし、普段生活している地域であっても大地形の把握は難しい。また、国土地理院が発行している地形図には建物などが記載されており、特に都市部では等高線の判読が困難な場合がある。
そこで、本研究では、水害ハザードマップへの理解を促すため、地形の特徴を直感的に理解しやすい3DCG教材の開発を行い、その効果を検証することを目的とした。
2.教材作成
作成した教材はweb上での閲覧が可能である。教材の作成では、地形の3DCGデータを地理院地図ウェブサイトから入手した。その後、Blenderを使用し、矢印や文字の3DCGを追加した。作成したファイルはweb上のプラットフォームであるSketchfabへアップロードし、USDZ形式に変換した。変換したファイルをiPadへとダウンロードした。iPadでは、作成した教材のAR表示と通常の表示が可能である。
3.授業実践および評価
首都圏の男子中学2年生240名を対象とし、本教材を使用した授業実践を行なった。授業実践においては、渋谷地区と駒場地区を対象とし、それぞれの地域の平面地形図、3DCG立体地形図、3DCG立体ハザードマップを用いて、浸水域の予想を行なった。教材による効果と、渋谷地区と駒場地区の難易度の差による効果を分離するため、渋谷地区を先に学習してから駒場地区を学習するA群と、駒場地区を先に学習してから渋谷地区を学習するB群を設定した。
作成した教材の評価は、授業中に行った浸水域の予想結果(理解度調査)と、授業後に行った生徒の意識調査をもとに行った。理解度調査の結果から、全体的な傾向として、台地と谷沿いの浸水地点は、平面地形図に比べて3DCG立体地形図で正答率が高くなる傾向が見られた。一方で、台地上の窪地に関しては、平面地形図よりも3DCG立体地形図で正答率が低くなる傾向が見られた。
・3DCG教材の作成方法に関しては、以下のwebページにまとめた。
https://sites.google.com/site/jouetsuargroups/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97/07%E7%AB%8B%E4%BD%93%E3%83%8F%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97
・本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。