日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 総合的防災教育

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:林 信太郎小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)、山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)、山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、林 信太郎

10:00 〜 10:15

[G01-05] 国土交通省富士砂防事務所の防災教育への取り組み事例 -職員向け防災教育マニュアル-

*小野 秀史1、松山 薫1、光永 健男2、大西 竜太2、高橋 麻里2、久須美 晨夫2 (1.株式会社エイト日本技術開発、2.国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所)

キーワード:防災教育、火山防災、土砂災害防災、防災教育マニュアル

1.国土交通省富士砂防事務所が取り扱う防災教育の方針
国土交通省富士砂防事務所管内を俯瞰すると、火山噴火災害や土砂災害の観点からみた防災教育の対象としては、地域住民、登山者や観光客等、様々な対象者が存在する。全ての対象者に画一的に啓発するのではなく、効果的な教育のアプローチができるよう、対象者の特性に応じて配慮する必要がある。このため、防災教育を実施する立場の職員自らが学習を行うとともに、防災教育の効果的な手法を限られた時間やコスト制限の下で実施できる方法について検討が進められている。
2.砂防事務所職員向け防災教育マニュアルの目的と必要性
 ここでは、これらのアプローチのうち、事務所職員を対象とした防災教育課題、特に「事務所職員向け防災教育マニュアル」の整備案について説明する。「事務所職員向け防災教育マニュアル」の整備は、事務所職員の防災教育における指導力の向上をはかり、これが防災教育全体への波及効果・実施効果を向上させることを目的としている。富士砂防事務所職員による火山・土砂防災や砂防事業に関する防災教育の実効性の向上をはかるため、「事務所職員向け防災教育マニュアル」の具体的な整備案を検討した。「防災教育マニュアル」とは、防災教育方針に基づいて防災教育イベントの企画準備や使用するツール等について総合的に解説する説明要領である。なお、ここで記す防災教育イベントとは、事務所職員による防災教育の出張講座、現地砂防施設見学会、野外学習会、防災事業の説明展示会等を含めたものを定義する。
3.マニュアル作成対象のカテゴリー分類
 国土交通省・富士砂防事務所がこれまで実施してきた防災教育の傾向を踏まえ、防災教育イベントを以下の4ケースを選定し、事務所職員向け防災教育マニュアルの作成を検討した。
(1)野外学習会(現地見学会):火山災害・火山砂防・土砂災害(土石流); 社会人一般を対象とする.
(2)野外学習会(現地見学会):土砂災害(地すべり); 社会人一般を対象とする。
(3)出張講座(座学による防災教育):火山噴火災害・土砂災害全般; 小中学生を対象とする。
(4)防災事業説明展示会:火山噴火災害,土砂災害全般; 社会人一般を対象とする。
4.事務所職員向け防災教育マニュアルの構成
「事務所職員向け防災教育マニュアル」の構成は、取扱いの利便性をはかるために、本編及び別冊資料編の2編からなる構成とした。本編は、防災教育イベントの目的、イベントの流れ、使用する教材等、企画準備や運営に関わる基本的事項を解説したものである。別冊資料編は、本編に付随させて内容を補完する資料として、防災教育に使用する教材やツールの操作方法・取扱い方法等の解説を含むものである。また、取扱いの容易な詳細解説あるいは概略説明用の配布資料(パンフレット)等の整備も検討した。
マニュアル本編の冒頭には「目的」を明確に記している。これは、防災教育の対象者と対象事象に応じて必要な防災教育の種別や防災教育イベントの進め方、使用する学習教材・資器材等が変わるためである。続く章・項目には、「防災教育の対象者」、「対象事象」、これらに応じて異なる「防災教育イベントの進め方と留意点」、「防災教育に使用する教材」及び「使用する資器材」を記述している。防災教育を受ける側の視点に立つと、先に防災教育イベントの流れを理解した方が全体をイメージし易い。このため「防災教育イベントの進め方」を目的の後に配置し、続けて「当該マニュアルの防災教育の対象者」、「使用する教材・資器材」を配置することとした。
5.事務所職員向け防災教育マニュアルの見直し・改善
「事務所職員向け防災教育マニュアル」は、継続的な見直し・改善を行い、より実効性を高めることが重要である。内容の見直し・改善のため、PDCAサイクルに従う運用によりマニュアルの実効性向上を目指し、継続的な更新計画とその実施を図る。すなわち、まず当初計画(PLAN)に基づいて防災教育を実施し(DO)、職員の気づきや、アンケート調査等を通じて得られる対象者の意見等を防災教育の課題として整理し(CHECK)、課題における問題点を検討してマニュアルの内容や構成等の改善に反映させる(ACTION)。