日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)

09:00 〜 09:15

[G04-01] F5解を用いた能登半島地震に伴う地殻変動の可視化

*加藤 忠義1 (1.横浜市立丸山台中学校)

キーワード:地殻変動、GEONET、F5解

能登半島では、2020年12月から地震活動が活発化しており、2023年1月1日には、M7.6という大規模な地震が発生し、能登半島各地で震度6強や震度7の非常に強い揺れを観測した。プレート沈み込み帯に位置する日本列島の地殻変動は、国土地理院が管理する約1400点のGNSS観測点からなるGEONET(GNSS連続観測システム)によって詳細にとらえることが可能になり、地震や火山活動に伴う非定常変動やプレート運動に伴う定常変動を観測している。1996年から運用が始まったGEONETはこれまでに、数多くの地震活動や火山活動に伴う地殻変動を観測してきた。GEONETが観測している日々の観測データは、ベクトル図や時系列の他に座標データでも一般に公開されており、公開されている座標値データを用いることで、誰でも日本列島の地殻変動を考えることができる。
 現在の中学校教育では、『地球』という単元の中で3年間を通して自然災害について取り上げられているが、地殻変動や地震活動については、中学1年生で学習する以外は、中学3年生の『環境』の単元で自然災害のひとつとして取り上げられる程度で、日本列島の地殻変動に触れる機会が少ない。このような現状において、日本列島の地殻変動や地震活動が視覚的にとらえることができる教材の作成は、日本列島の地殻変動を考えるための導入として有効であると考えられる。すでに国土地理院では、動画によって日本列島の地殻変動を、1997年から20年間分の水平変動をベクトル図で公開しているほか、1996年~1999年までの3年間の水平地殻変動、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による水平地殻変動がアニメーションで公開されている。しかし、最近の地殻変動の様子を視覚的にとらえるアニメーションは作成、公開されていない。
 今回は、国土地理院がGEONET観測データを独自解析し公開している最終解析解(F5解)を用いて、日本列島の地殻変動アニメーションを作成するとともに、能登半島で発生した比較的大きな地震前後の地殻変動を比較した。能登半島では、繰り返し発生している比較的大きな地震によって、北西方向の変動が著しいことや、地震発生後の隆起傾向にあることが視覚的にとらえることができた。今回作成した地殻変動図は、これから地殻変動や地震活動などを学習する中学生にとっては直感的にとらえることができる教材になるだろう。