日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)

09:45 〜 10:00

[G04-04] ドローンを利用した地球科学・環境科学学習用映像資料の作成

*田原 敬治1 (1.和歌山県立南紀高等学校)

キーワード:ドローン映像、資料、視覚化、3Dモデル

【はじめに】
 筆者は、地学分野の授業をするにあたって、学習指導要領に明記された目標のベースとして、空間と時間の概念を生徒達に身につけてほしいと考えている。それは、これらの概念が地学分野(地球科学・環境科学)を学ぶ際の軸であると考えるためである。また、筆者は定時制夜間部に勤務しており授業時間の野外観察は行えない。
 そのため、教室内での授業において地学的な空間の概念を視覚的・直感的に伝え、学習対象となる地形・地質・構造・現象などを理解しやすい映像資料の作成と活用を試みた。

【使用機器及びソフトウェア】
 空撮にはParrot社製ANAFI(normal及びthermal)を使用し、対象の周囲を手動および自動(Pix4Dcaptureで制御)を飛行させ、映像資料の元になる動画及び写真を撮影した。また、3DモデルはPix4D社製Pix4Dmapperを用いて作成した。

【作成した映像資料の例】
①ヒキ岩群(和歌山県田辺市):傾斜した砂岩層が浸食により、何匹ものヒキガエルが並んだように見える岩峰を作っている。ハイキングコースが設置されており現物に触れることができるが、上空からの視点で見ると地層の連続性や傾く角度などの地形の形成要素がより一層理解できる。

②フェニックス褶曲(和歌山県すさみ町):褶曲構造の背斜と向斜をはっきりと見ることができる海食崖の露頭である。ただし、安全上の問題のためガイド同伴でないと立ち入ることはできず容易に観察することが難しい。空撮映像をみると、周囲の海食崖の地層との連続性がよくわかる

③和深海岸(和歌山県串本町):砂岩泥岩互層が明瞭に観察できる露頭があり、周辺の岩礁も岩質によって浸食の受け方が異なっている。岩礁上には浸食度合いの違いによる凹凸をはっきりと観察することができる。海食崖の露頭と岩礁上に現れた層の傾きの関係がよくわかる。

④橋杭岩(和歌山県串本町):熊野カルデラの活動に伴う岩脈であり、周囲には津波で動かされた漂礫が分布している。上空からの視点では、岩脈の配列や漂礫の分布状況がよくわかる。岩脈の配列から、マグマが貫入した際に通った経路を推測することができる。

⑤下里大浜(和歌山県那智勝浦町):河口での沿岸流による砂州の形状がよくわかる。規模が数百mあるため、3Dモデルを使うことで、全体の形を把握することができる。また、砂州上では台風などの大波によって、砂が海側から陸側へと運ばれることを地形から読み取ることができる。

⑥玉の浦(和歌山県那智勝浦町):太平洋から内湾へと続く遠浅の海域である。海水の透明度が高く、砂地の海底にはアマモの仲間が生育しており、藻場が形成されている。空撮を行うことによって、沿岸域の藻場の広がりを面的にとらえることができる。

【今後に向けての課題】
 対象の空間的広がりを感じるには、生徒たちが現地に行くことが一番である。それを補うため、生徒たちの声を聴き、より直感的に理解しやすい資料に改良する必要がある。

【文献】
田原敬治,2023a,令和5年度(2023年度)全国理科教育大会・第94回日本理化学協会総会 兼 第58回和歌山県高等学校理科研究大会研究発表論文集
田原敬治,2023b,日本地質学会第130年学術大会講演要旨集